わが国の公的皆保険制度は世界に誇るべきセーフティネットシステムだと思います。
しかし近年、政府自民党は財務省が主導する緊縮財政(財政収支の縮小均衡)至上主義の観点から、折につけて患者の自己負担割合を引き上げてきました。
なおも政府は『高額療養費制度』を改正し、医療費の1ヶ月あたりの患者負担の上限を引き上げようとしています。
医療費の自己負担が高額になった場合、当該制度が適用され一定の金額(上限)を超えた分が後で払い戻されることになっているのですが、この上限を引き上げるということです。
しかしながら「また国民負担を増やすのか」という世論もあって、2月28日の段階で再検討ということになりました。
「このままでは参議院選挙でも負けてしまう」とでも思ったのか・・・
川崎市などの地方自治体でもそうですが、わが国の政策変更の根底には常に「緊縮財政」があります。
緊縮財政は「おカネが足りないんだから、増税するか、もしくは何らかの事業費を削るしかないじゃん…」という稚拙な思考に基づいています。
主権通貨国であるわが国においては、おカネが足りないのなら政府が通貨を発行すればいいだけなのに、通貨発行権を持つ政府がどうして国民の懐からわざわざ通貨を回収しようとするのでしょうか。
まったく理解に苦しみます。
要するに、政治行政に携わる者たちの多くが「通貨が発行されるプロセス」を理解していないからだと思われます。
ここで言う通貨とは「日本銀行券」のことです。
日本銀行券(以下、日銀券)ですから、これを発行するのは政府の子会社たる日銀(中央銀行)です。
では、日銀はどのように日銀券を発行しているのか。
日銀は、親会社である政府が発行した国債を市中銀行から間接的に買い入れるのですが、その際同時に日銀当座預金を(市中銀行に)発行します。
その日銀当座預金(市中銀行の資産)を、こんどは市中銀行が需要に応じて現金紙幣(日銀券)で引き出します。
そして民間の家計や企業は、自らの資産である銀行預金を現金紙幣(日銀券)で引き出しています。
私たちが日常的で手にしている紙幣(日銀券)が、まさにそれです。
お解りでしょうか。
現金紙幣(日銀券)は、日本政府が発行した国債が姿を変えたものなのです。
すなわち、国債という存在がなければ、日銀は通貨(現金紙幣)を発行できないのでございます。
これを理解していない者たちが、現金紙幣を尊ぶくせに、国債発行残高の増加を問題視しているわけです。
上のグラフを見てのとおり、現金(日銀券)は日銀のバランスシートの負債の部(貸方)に計上されています。
そもそも、通貨(貨幣)は「負債」なのです。
私たちは政府(日銀)が発行した国債(現金)という「表券された負債」を使って経済活動を行っています。
何度でも言います。
通貨を発行できる政府が、どうして国民の懐から通貨を奪わねばならないのか。
むろん、国民の懐から通貨を回収しなければならない局面もあります。
それは、日本経済がデマンドプル・インフレになったときだけです。
コストプッシュ・インフレ、及びサプライロス・インフレの今は、国民の懐から通貨を回収してはならない。