食料品の値上がりが続いています。
なかでも酷いのがお米と野菜ですが、とりわけキャベツは先週の時点で全国の平均小売価格が1キロあたり550円余りとなり、平年に比べ3倍以上の高値になっています。
都心のスーパーでは、1キロあたり1,000円を超えているところもあります。
テレビのニュース番組では「去年夏の暑さやこの冬の少雨などの影響で野菜の値上がりが続き…」という言い方をしているため、多くの視聴者たちは「値上がりは一時的なものである…」と思っているのかもしれませんが、それはあまりにも楽観的すぎる見解だと思います。
私などは、ついに食料危機がはじまった、と確信します。
なぜなら、値上がりの要因は天候だけでなく構造的な問題を抱えているからです。
その点、2008年に発生した食料危機(国際的な食料価格の高騰)の教訓が生かされなかったのは誠に残念なことでした。
あのころは、とにもかくにもグローバリズム全盛で、すなわち徹底した自由貿易が追求されたがために、世界では輸出国の少数化と輸入国の多数化が進みました。
結果、ちょっとした天候不順や資材価格の高騰などが発生すると、たちまちにして需給バランスが崩壊し、食料価格が急騰しました。
すると人々の不安心理が高まり、輸出国は自国の食料確保を優先に輸出を規制する。
それがまた食料価格の高騰に拍車をかけることになります。
あるいは価格が高騰することで、今度はグローバリズム経済の主要プレーヤーたちによる投機マネーが動き出して高騰に拍車がかかり、「カネはあるのに買えない」という状況に陥ります。
メキシコやハイチでは、特にそれが顕著でした。
例えばハイチは、IMFの管理下で融資条件として1995年に、輸入するコメの関税を3%にまで引き下げることを約束させられていました。
そのため、国内のコメの生産が大幅に減少していたところに、2008年の世界的なコメ輸出の規制によって、おカネを出しても買えないという状況となり暴動が起きて死者が出るほどの事態に至りました。
当時、コメの在庫は世界的に充分にあったのですが、不安心理から各国がコメを売ってくれなかったのです。
外国に食料を依存することの恐ろしさはここに在ります。
であるからこそ、自給能力の向上を図らねばならないのに、わが国はそれを怠ってきました。
米作農家や野菜農家の廃業に歯止めがかからず、自給能力は向上どころか更に減退したのです。
よって、現在の食料価格の高騰は一時的なものとみるべきではない。
食料における輸出国の少数化と輸入国の多数化が世界的に進んだなか、国内の自給能力を減退させてしまった以上、食料危機は避けがたい。
そして食料危機は、ある日突然に訪れるものではありません。
まずは食料価格の高騰からはじまるのです。