1月17日、内閣府は『経済財政諮問会議』を開き、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、以下PB)が2025年度に4.5兆円程度の赤字になるという試算をまとめました。
4.5兆円は、対GDP比で0.7%にあたります。
PBとは、政府が支出する政策経費(社会保障費、防衛費、教育費、公共事業費等々)を税収だけで賄えているかどうかを示す指標です。
当初、政府は2025年度のPB黒字化を想定していましたが、むろん不可能であるし、すべきでもありません。
そもそも政策経費を税収だけで賄う政府など、正気の沙汰ではありません。
財政はスペンディング・ファースト(支出が先、税収は後)なので税収は財源ではありませんし、政府が見込まれた税収以上の支出をしないとなると、政府による貨幣発行量は1円も増えないことになります。
貨幣発行量が増えない経済というのは、シュンペーターの言う「静的経済」であり、まったく成長しない経済です。
現に日本は、政府がPB黒字化を目指してきたために経済は四半世紀以上にわたりほぼ成長していません。
いわゆる、失われた30年です。
信じられないかもしれませんが、政府は財政支出することで国民経済に貨幣を供給しています。
財政支出が貨幣の供給(創造)であるのに対し、税収は貨幣の回収(破壊)となります。
すなわち、政府と国民の間のやり取りにおいて、政府が国民からマネーを吸い上げ過ぎれば国民は貧困化し、消費も投資も減少します。
よって、インフレ率が許す限りにおいて、政府は常に税収以上のマネーを放出しなければならないのでございます。
要するに、PB黒字化目標とは「国民貧困化目標」そのもので、PBを黒字化することのメリットなど何一つありません。
政府財政のPBが安定的に黒字化するときというのは、バブル景気によって民間部門(企業や家計)がおカネを借りまくったとき、すなわち異常な経済のときのみです。
1980年代後半の昭和バブルのときがそうでした。
この時、政府のPBは黒字化しています。
なんどでも言います。
政府はPBを赤字化することで、つまり国債を発行することで国民経済に貨幣を供給しています。
それが政府の仕事です。
これを理解できぬ政治家、役人、学者、マスコミらが、残念ながら世を牛耳っています。
一刻も早く、PB黒字化目標を破棄してくれる内閣をつくる必要があります。
PBとは、まさに亡国の指標です。