GDPとは何か?
わが国に、これを説明できる議員はいったいどれだけいるのでしょうか。
川崎市議会議員でも、ほとんどいないでしょう。
いないというか、おそらくは「経済規模を示す指標…」ぐらいの認識だと思われますが、それではGDPを理解したことにはなりません。
なお、GDPにも名目値と実質値がありますが、もしかするとその違いすらも理解できていないかもしれません。
べつにGDPを理解できなくても選挙に当選しさえすれば一応は「議員」ですので、糾弾するつもりはありません。
ただ、GDPを理解せず、どのようにして川崎市民(日本国民)を豊かにすると言うのでしょうか。
まちがいなく言えることは、「国民(市民)を豊かにする」と言った場合、それは「国民(市民)一人当たりの実質GDPを増やす」ことと同義です。
因みに、「おカネなど無くとも、人は幸せになれる」という理屈は個人の価値観や哲学の問題であって、マクロ経済(=財政政策)に責任をもつ政治行政がそれを言い出したらおしまいです。
作家の塩野七生さんは「政治とは、国民にショク(職=食)を与えることだ」と仰っています。
これもまた「国民(市民)一人当たりのGDPを増やす」ことと同義です。
論語にも「食を足らし、兵を足らし、民これを信ず」とあり、すなわち「豊かさと安全が保障されなければ、国民は政治を信じない」と書いてあります。
国民一人当たりのGDPを増やすことなく、国民のショク(職=食)を足らすのは不可能です。
ゆえに、GDPを理解できぬ者たちが政治行政に携わっているのは、国民(市民)にとって実に不幸なことであります。
では、GDPをこれ以上は無理というぐらいに簡潔に説明します。
GDPとは、国民が働いて生産した財やサービスを他の国民が買う(=支出する)と所得になり、その所得の国内合計。
もっとざっくり言うと「粗利の合計」です。
その大まかな内訳は、①政府の支出、②民間(企業・家計)の支出、③純輸出です。
GDPは①②③の足し算です。
これを金額で見た場合が「名目GDP」であり、数量で見た場合が「実質GDP」です。
重要な点は、政府もまた経済活動の中では生産者(行政サービスの生産)である一方、おカネを支出することで国民に所得をもたらしているのでございます。
よって、政府支出が増えるとGDPは拡大し、政府支出を減らすとGDPは減少します。
上のグラフは、政府支出と経済成長率(GDP成長率)の相関関係を示したものです。
政府支出を拡大してこなかった日本のGDP成長率が低いのは明らかです。
なので、議会において「行政はもっと支出を減らせ」と主張している議員らは、「もっと国民の所得を減らせ」と言っているのと同じです。
何度でも言います。
政府や地方行政が支出を拡大すると、その分、GDPは必ず拡大し、国民の所得が増えます。
これは紛うことなき事実です。
ところが、その事実を隠したい財務省が、とんでもない資料(グラフ)をつくって世に公表しています。
下のグラフをご覧ください。
これは財務省が作成した「OECD各国の政府債務残高と実質GDP成長率」というグラフです。
よく見ますと、タイトルが「OECD各国の政府債務残高と実質GDP成長率」となっているのですが、実際のグラフのX軸は「政府債務残高対GDP比」になっています。
つまり、GDP成長率の相関対象が「政府債務残高」ではなく、「政府債務財高対GDP比」になっているのです。
「政府の債務残高」と「実質GDP成長率」をプロットしたいのであれば、当たり前ですがX軸は「政府債務残高」でなければおかしい。
どうして「政府債務残高対GDP比」なのか?
むろん、理由は簡単で「政府の債務残高」をX軸にしてしまうと、私がつくった上のグラフになってしまうからです。
ご承知のとおり、わが国は長引くデフレにより、GDPが成長していません。
ゆえに債務残高をGDPで除せば、わが国の政府債務残高だけを膨れ上がらせることができるわけです。
これは明らかに、財務省による統計偽装です。