ロシア・ウクライナ戦争、停戦の難しさ

ロシア・ウクライナ戦争、停戦の難しさ

トランプ次期米大統領が12月7日、訪問先のパリでマクロン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領と3者で会談しました。

会談の結果、ロシア・ウクライナ戦争の早期終結にむけ取り組むことで3者は一致したらしい。

先の米大統領選挙中、トランプ氏は「自分が大統領になったら、この戦争を24時間以内に終わらせる」と豪語していました。

言った以上は米大統領として実現しなければならない。

とはいえ、現状は深刻です。

トランプ氏としては、バイデン政権がウクライナを軍事的に支援していることが戦争を長引かせている元凶と考え、支援さえ止めれば戦争はすぐに終結できると考えているのかもしれませんが、そう簡単にはいきません。

24時間どころか、終結の道は全く見えていません。

そもそも、この戦争はロシア(プーチン大統領)がウクライナのNATO加盟を阻止するために始まりました。

因みに、その大本を辿れば、米国がNATOの東方拡大によりロシアを追い詰めた結果と言っても過言ではありません。

トランプ時期大統領は、「就任直後にプーチン大統領とゼレンスキー大統領の間に立ち、両者を停戦に向けたテーブルに着かせる」と言っていましたが、ウクライナ側がNATO加盟を断念し、なおかつ被占領地の武力奪還を断念しさえすれば話は別ですが、この二つをウクライナ側が譲歩しないかぎり、プーチン大統領は絶対に停戦に応じないでしょう。

ロシア政権内部の強行派の手前もあって、プーチン大統領としても絶対に譲れないところです。

プーチン氏とて、何でも自分の思い通りになるわけではなく、政権内部の声を無視するわけにもいかないのです。

へたに妥協すれば、失脚すらあり得ますので。

仮にプーチン大統領が失脚したとして、次のロシア大統領が戦術核の使用を躊躇せぬほどに、もっと強硬に出る可能性だってあるのでございます。

戦況的に劣勢に立っているウクライナ側が妥協すべきところですが、ゼレンスキー大統領としては現在占領されている東部と南部とクリミア半島の武力奪還を諦める代わりに「NATOへの加盟」を停戦の条件にしたいところでしょう。

繰り返しますが、その条件(ウクライナのNATO加盟)ではロシアは絶対に停戦には応じない。

ウクライナのNATO加盟を阻止するためにはじめた戦争を、NATO加盟を認めて終結させることなどあり得ません。

実はNATO側も、今さらウクライナに加盟してもらっては困るという状況にもなっています。

もしもウクライナがNATOに加盟すれば、NATO諸国には、ウクライナ防衛のためにロシアと戦わねばならぬ義務が生じてしまうからです。

彼らもそれは避けたい。

そこがゼレンスキー大統領の最大の弱みです。

では、ウクライナがNATO加盟を諦め、米国との二国間の安全保障条約を締結することで代用してはどうか。

おそらくそれもプーチン大統領は認めないと思います。

ロシアとしてはあくまでもウクライナの地を緩衝地帯にしておきたいのでしょうし、日米安保の存在があることで中国がなかなか尖閣諸島を強奪できない現状をみれば明らかです。

ウクライナとしては、東部、南部、クリミア半島などの被占領地を武力で奪還することはほぼ不可能な状況となってしまった以上、領土奪還とともにNATO加盟をも諦め、ロシアとの停戦協定に応じるほかはないものと思われます。

ただ、いったん実効支配権を奪われてしまった領土を取り返すことはなかなかに難しい。

北方領土や竹島をみれば明らかです。

しかし大本を辿れば、東部のロシア系住民を迫害し(ロシア語の使用制限など)、米国にそそのかされロシアを散々に刺激してきたことが大きな仇となって返ってきた結果とも言えなくもない。