現在、自民党の政務調査会には財政政策のあり方をめぐり「財政健全派」と「積極財政派」の二つの本部が存在しています。
前者は「財政健全化推進本部」(古川禎久本部長)、後者は「財政政策検討本部」(西田昌司本部長)です。
このことが党内の路線対立の象徴にもなっていることから、来年初めにも政務調査会のもとに一本化した組織にするという。
なるほど、積極財政派のほうが圧倒的に少ないから、「一つにまとめちゃえば静かになるだろう…」という魂胆か。
あるいは、積極財政派が堂々と健全財政派を論破する場となるのか。
仮に論破したとしても、健全財政派のほとんどの人たちは、都合の悪いことは「聞かなかった」ことにする人たちですから果たしてどうか。
積極財政派の主張は「デフレを脱却し、経済(GDP)を成長軌道に乗せるためには、どうしても政府債務を拡大させねばならない」「政府債務を拡大しても日本政府は破綻しない」というものです。
それに対し、財政健全派は「政府が債務残高を拡大しても経済(GDP)は成長しない」「政府債務を拡大すると破綻するぅ〜」と主張しています。
ちなみに財政健全派の主張は、財務省が垂れ流す「財政破綻論」そのままで、それ以上でも、それ以下でもありません。
とにもかくにも彼ら彼女らは「赤字」を悪いものとみなします。
しかしながら、もしもこの世に「赤字」というものがなければ経済そのものが成立しません。
上のグラフは、各経済主体の資金過不足の推移です。
プラスは資金過剰(黒字、純資産の増加もしくは純負債の減少)で、マイナスは資金不足(赤字、純負債の増加もしくは純資産の減少)です。
ご覧のとおり、この四半世紀のあいだ、非金融法人企業(民間企業等)は資金過剰(黒字、純資産の増加もしくは純負債の減少)になっています。
本来、企業というものは借金(資金不足)をして投資を行い、生産性を向上させることで成長する事業体です。
しかしながらグラフのとおり、企業が投資(借金)をするどころか、借金返済(資金過剰)にいそしんでいるような国では、政府が一定規模の財政支出を増やしたところで経済成長するとは限りません。
なぜなら、政府の財政支出というGDP拡大効果が、民間企業の支出縮小により相殺されてしまうからです。
とはいえ、政府までもが企業と同じように支出を削減してしまうと、「民間の支出削減+政府の支出削減」となって二重の需要削減効果となってしまい、GDPは著しく縮小することになります。
実際にそうなりました。
よって、このようなデフレ(総需要の不足)期には、政府は民間の歳出削減を相殺する以上の支出拡大をしなければなりません。
すなわち、大規模かつ長期的な財政支出が必要になります。
残念ながら、1998年以降の日本は、政府の赤字拡大が足りなかったがゆえに低成長だったのです。
ちなみに、2003年から2007年にかけて政府の資金過不足が黒字化したのは小泉内閣による緊縮財政の結果であり、2012年から2019年にかけての黒字化は安倍内閣による緊縮財政の結果です。
上のグラフでいえば、企業の資金過不足が安定的にマイナス(資金不足=赤字)になったときこそが、「デフレ」を脱却したときです。
なお、グラフをみますと、誰かの赤字が誰かの黒字をつくっていることがよくわかります。
緊縮財政派は嘘をついても、数字は嘘をつかない。