総務省が発表した10月の家計調査によれば、2人以上世帯の消費支出は30万5819円で、物価変動の影響を除いた実質値は前年同月比で1.3%の減少となりました。
減少(マイナス)は3カ月連続です。
実質消費が1.3%の減とは、「昨年10月にはパンを100個買えていたのが、今年の10月は98.7個しか買えなくなった」という意味を持ちます。
僅かパン1個ちょっとじゃないか、と思うなかれ、ミクロで捉えると確かに僅かなのですが、マクロでみると決して小さな数字ではありません。
少なくとも日本国民は昨年の10月よりも貧乏になり消費を減らしたのです。
消費が減っている理由は、むろん実質的な可処分所得が減少しているからです。
当たり前ですが「カネがないから消費できない…」わけです。
上のグラフは2000年以降の実質消費支出の推移です。(2020年を100とした場合の指数)
ご覧のとおり、この四半世紀、私たち日本国民がいかに貧困化してきたのかがよくわかります。
なぜ貧困化したのかといえば、その根本理由は、むろん政府(政治)の愚策にあります。
具体的には、緊縮財政と構造改革です。
とりわけ緊縮財政については、政府が歳出を抑制してきたのに加え、消費税が10%にまで引き上げられたのは致命的でした。
今、もしも「消費税」が廃止されれば、それだけで物価は10%下がりますので、実質賃金は自動的に上昇し、日本国民は消費支出を増やすことが可能になります。
ところが、消費税の減税や廃止を主張すると、「財源はどうするんだ?」という議論に必ず陥り、なかなか支持を得られません。
そういう人には「財源は国債です」と説明するのですが、例によって「これ以上、後世にツケを残していいのかぁ…」となります。
ですが、明治政府がスタートして以来、日本政府の債務は既に4000万倍にまで膨れ上がっているにもかかわらず、政府は今なおデフォルト(財政破綻)していませんし、今を生きている私たち日本国民は、明治や大正に生きた人たちのツケを払わされてはいません。
あたりまえですよ。
国債の発行と償却は、借り換え(ロールオーバー)の連続なのですから。
ここが家計と異なるところです。
政府は永続的に続く、ゴーイングコンサーンなのです。
それに、日本国債は100%日本円建てで発行されています。
ゆえに絶対に財政破綻などしません。
財政破綻しない、というよりも「財政破綻できない」のです。
なにしろ、日銀はキーボードを打ち、バランスシートの貸方の数字を増やすだけで日本国債を買取ることが可能です。
政府の子会社である日銀が国債を買取ると、その瞬間に政府の返済義務は消滅します。
「そんな都合のいい話などあるのか…」と思われるかもしれませんが、現に今、そうなっています。
2013年、当時の黒田日銀総裁がはじめた量的緩和(黒田バズーカ)以来、これまで日銀は500兆円以上もの国債を買い取っています。
よってその分、日本政府の負債は相殺され消滅しています。
それでいて日銀は債務超過に陥っているわけでもありません。
仮に陥ったところで、「それの何が問題なの?」という話です。
去年だったが、一昨年だったか、オーストラリアの中央銀行が債務超過に陥ったものの、べつに中銀としての機能に何らの支障もきたしませんでした。
自国通貨建てで国債を発行できる国の中央銀行というのは、そういうものです。
何度でも言います。
正しい貨幣観に基づく、正しい財政運営が為されないかぎり、日本国民が豊かで安全に暮らすことは不可能です。
百歩譲って、貨幣観を間違えていてもいいから、せめて正しい財政政策だけはやってほしい。