忘れもしない、私が高校を卒業し大学に進学した年、すなわち1989年、米ソ冷戦の象徴だったベルリンの壁が壊され、東西冷戦が終結しました。
当時、自民党の国会議員であった塩川正十郎氏が国会で「世界は変わったと言われるが、それはソ連を中心にした社会主義陣営(東側陣営)が敗北しただけのことで、西側陣営は今なお盤石だ」という趣旨の発言をされていたのを記憶しています。
それを聞いて私は、学生ながらも「なるほど、ということは西側陣営は今後ますます経済的発展を遂げていくのだろう…」と思ったものです。
ソ連が崩壊したことで、1990年以降、西側陣営のリーダーである米国が唯一の覇権国となりましたが、米国は経済のグローバル化を進めていきます。
私が高校生のころまで、大人たちから「これからは国際化(インターナショナル)の時代だ」と言われてきたのですが、大学に入ったころには「国際化」という言葉は消え、なぜか「これからはグローバリゼーションの時代だ」と言われるようになりました。
恥ずかしながら当時の私には「インターナショナル」と「グローバリゼーション」の違いがよくわかりませんでした。
それを理解できたのは、社会人になって政治の世界に足を踏み入れてからのことです。
平たく言えば、インターナショナルは国境を肯定しつつ他国との様々な関係を構築していくものであるのに対し、グローバリゼーションは完全なる国境の否定です。
そして、グローバリゼーションを支える根本思想こそが「ネオリベラリズム(新自由主義)」です。
あるいは「カネ、ヒト、モノが国境を超えて世界を行き交うなかで株主価値を最大化させる経済思想」と言ってもいい。
これを具現化するために行われた政策が「構造改革」と「緊縮財政」です。
わが国においても、1990年代から散々に行われてきたことです。
ちなみに、最も過激に行ったのが小泉内閣です。
株式などの金融資産を莫大に保有している資産家たちは、とにかく政府の規制や財政出動を嫌います。
例えば財政出動は、需要を拡大し経済を成長を通じてインフレ率と実質賃金を上昇させます。
むろん、インフレ率の上昇は彼らの金融資産の価値を目減りさせることになり、実質賃金の上昇は人件費高騰につながって彼らが得るべきはずの株主配当を減らすことになります。
グローバリゼーションの結果、とりわけ先進国の中間所得層が破壊され、わが国においても実質賃金の低下と格差拡大がもたらされたのは周知のとおりです。
所得(GDP)を稼いで暮らす人々よりも、金融資産などの運用で財を成す人たちのほうが裕福になっていったのです。
冒頭の表のとおり、1990年のGDP世界シェアをみますと、米欧日(西側陣営)は7割近い世界シェアを占めていましたが、2023年には5割を切っています。
GDPで暮らす西側諸国の中間層の人たちが、いかに搾取されてきたのかがわかります。
ちなみに、グローバリゼーションで大いなる利を貪った国は中国(中国共産党)です。
ご覧のとおり、1990年には1.8%しかなかった中国のGDP世界シェアは、2023年には16.8%にまで拡大しています。
対して、わが国の落ち込み具合は凄まじく、このことが経済的貧困をもたらしているばかりではなく、安全保障面においても大いなる脅威にさらされる結果となっています。
にもかかわらず、この期に及んでもなお、川崎市のように「これからはグローバル化の時代だぁ」と言っている呑気な自治体があり、そのことに異を唱える議員が私しかいない現実をぜひ知って頂きたい。