貨幣のプール論

貨幣のプール論

今朝、『YAHOO!ニュース』をみたら、次のような記事がありました。

『巨額の国債の市中消化はほぼ不可能! 日銀による大量国債買い入れは事実上の「財政ファイナンス」である
https://news.yahoo.co.jp/articles/0bd58d1bba5c4f710303c023335bd0b9194921d6
黒田日銀は、長期金利をゼロ%程度に抑え込むために、多額の国債買い入れを行った。その結果、日銀の国債保有残高は約590兆円に達し、日本の一般政府債務残高の対GDP比率は、いまや257%(2022年実績見込み)と、先進国の中で断トツの高さにある。しかしながら緩みきった財政規律には回復の兆しはない。(後略)』

記事の注釈には、元日銀職員(金融市場局長)が著した『異次元緩和の罪と罰』から抜粋・編集したもの、とありました。

彼らは貨幣とは何かを全く理解していません。

まず、「財政ファイナンス」と言っていますが、財政ファイナンスという言葉は海外では通用しない言葉です。(日本でも通用しませんが…)

そもそも「ファイナンス」そのものが「財政」という意ですので、財政ファイナンスと言うと「ファイナンス・ファイナンス」となります。

「日銀のファイナンス・ファイナンスが問題だぁ〜」と言ったところで、海外の人には全くもって意味不明です。

彼らは「日銀が国債を購入していること自体が問題なんだ」と言いたいのでしょうけれど、いったいそれの何が問題なのかがよくわかりません。

ご承知のとおり、日本政府が国債を発行する際、日銀による直接引き受けは法律で禁じられていますが、日銀は「買いオペ」にあたっては市場から既発債を購入しています。

そして日銀が既発債を購入した瞬間に日本政府の国債発行残高は減ることになります。

政府という日銀の親会社の負債を、子会社である日銀が購入して資産にしているわけですから、資産と負債が相殺されて政府債務は消滅するからです。

べつに政府債務を減らす必要などないのですが、日銀はデフレ経済を払拭するための金融緩和政策(量的緩和)として市場の既発債を購入しています。

日銀が国債を買うと政府債務は減る!

この事実を認めたくない人たちは、日銀の国債購入を「財政ファイナンス(ファイナンス・ファイナンス)だぁ〜」と言って批判するわけです。

この種の人たちの共通点はことごとく「貨幣のプール論者」であることです。

貨幣のプール論とは、貨幣の量は決まっていて「貨幣のプール」をつくってそこに溜めることができると考える間違った貨幣論です。

要するに、政府や民間は貨幣量が一定の「貨幣のプール」から資金提供を受ける(借金をする)という妄想です。

しかし実際には、政府による国債発行(貨幣発行)にしても、民間銀行の融資(預金通貨発行)にしても、貨幣はおカネの貸し借りによって無から生み出されています。

例えば民間銀行による融資は、キーボードで金額を打ち込んで口座の残高を増やすだけであり、貨幣のプールからおカネをもってきて融資しているわけではありません。

キーボードで数字を打ち込むだけですので、おカネを借りる人さえいれば貨幣の量はいくらでも増やすことが可能です。

むろん、増やしすぎるとインフレ率が適正範囲を超えて上昇してしまいますので、民間銀行の融資額(預金通貨発行額)には定量的な上限が設けられています。

このことを理解できない人たち、いや理解しようとしない人たちが意味のない財政規律の必要性を説いています。