日本国憲法(第83条)では「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」とされています。
なお、憲法の前文には「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し…」とありますので、財政主権は国民にあることになります。
しかし残念ながら、現実は異なります。
日本国民は日本国の予算を決められません。
そもそも、国会は国権の最高機関でもありません。
私は小学校のときに「国会は国権の最高機関である」と教えてもらい、小学校6年生のときには国会議事堂も見学させてもらいましたが、大人になって政治の世界に入ってみたら、国会が国権の最高機関ではないことを知りました。
例えば横田空域なる「横田進入管制区」の存在は、まさにその象徴です。
ご存知のとおり、1都8県(東京都、栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県)に及ぶ広大な空域の航空管制は、日本国ではなく横田基地の米軍様が行っています。
「横田ラプコン」とも呼ばれるこの空域は完全に米空軍の管制下にあり、民間航空機であっても当該空域を飛行する場合には、米軍様から航空管制を受けなければなりません。
民間航空機が羽田空港へ着陸する際、わざわざ房総半島上空から埼玉県の方まで大回りしてアクセスしなければならないのはこのためです。
この横田空域は国会で決められたものではありませんし、これを裏付ける法的根拠など何もなく、我が国の航空法にも「横田空域」に関する文言は一つもでてきません。
横田空域は憲法や国会を超越した会議である「日米合同委員会」という密室会議において、米国様から一方的に押し付けられて決まったことです。
すなわち、我が国における国権の最高機関は米国様なのでございます。
ただし、「緊縮財政」や「消費税の導入や税率引き上げ」などについても米国様のご意向のように思っている方々がおられますが、それは違います。
あるいは、日本の財政政策についても「日米合同委員会」で決められていると主張する人たちがおりますが、日米合同委員会は日本の国土を米軍の基地として使用するために超法規的な措置を定めるところであり、経済財政政策についてここで要求されることはありません。
たしかに、かつてはUSTR(米国通商代表部)などが「年次改革要望書」をつきつけてきました。
郵政民営化などは、まさに「年次改革要望書」で要求されたことです。
ただ、郵政民営化は、最終的には私たち日本国民により正当に選挙された国会議員たちが決めたことです。
残念ながら日本国民に選ばれた国会議員たちが、かんぽ市場を米国様に差し出し、全国約2万の郵便局をアフラックの販売所にしてしまったのです。
同様に、予算案などの財政運営についても、最終的には国民に選ばれた国会により議決されています。
しかし、国の予算案は内閣がつくることになっていますが(憲法86条)、実際に予算案をつくっているのは財務省です。
かつての大蔵省設置法(第4条)にも「大蔵省(現・財務省)が国の予算及び決算を作成すること」とあります。
憲法では財政処理する権限は「国会」にあるとしつつも、大蔵省設置法では「大蔵省が予算をつくること」となっており、現在の財務省設置法(第4条)にも、財務省の所掌事務として「国の予算の作成」が謳われています。
要するにこういうことです。
予算編成権をもっているのは財務省様であり、私たちが選んだ国会議員たちは財務省様に「おらが街のどこそこに道路予算を付けてください」とお願いをしなければならず、そして財務省様によって作られた予算案を原案のままスルスルと国会で通しているのが実態です。
むろん、正当な選挙で国民から選ばれた国会議員が「緊縮財政を止めてくれ」とお願いしても、財務省様は聞き入れてなどくれません。
私たち日本国民に財政主権はないのでございます。