きのう、厚労省から8月の実質賃金の確報値が発表されました。
数値は上のグラフのとおりで、「現金給与総額」は前年同月比でマイナス0.8%、「きまって支給される給与」は同じくマイナス1.1%となりました。
とりわけ、私が重視している「きまって支給する給与」は2022年7月以来、一度たりとも2020年平均を上回った月がありません。
ところが、なぜか今朝の日本経済新聞は8月の実質賃金(確報値)について報じていません。
投票日を明後日に控えているから、ひょっとすると政権(財務省)への忖度なのでしょうか。
念のため実質賃金が下がることの意味を説明しますが、実質賃金の下落とは、物価の上昇に給与の上昇が追いついていない状態、あるいは物価の下落以上に給与が下落している状態を指します。
コロナ以前の日本経済は後者の状態でしたが、コロナ以後のコストプッシュ・インフレにより前者の状態になっています。
いずれにしても実質賃金の低下とは、日本国民が貧困化を意味します。
実質賃金が低下し続けている原因は、25年以上にもわたりデフレ経済を放置したこと、また30年以上にもわたり株主資本主義に基づく構造改革を行なってきたことにあります。
むろん、政治の責任です。
一方、8月の国の一般会計税収は、前年同月比で25.8%も増えています。
特に所得税については41.5%の増です。
これだけ実質賃金が下落し国民生活が貧困化(赤字化)しているわけですから、政府が黒字化するのも宜なるかな。
いつも言うように、誰かの赤字は誰かの黒字なのでございます。
ポストケインズ派として名高いL・ランダル・レイは、その著書の中で次のように述べています。
「正常なケースは、政府が財政赤字を運営していること、すなわち、税によって徴収する以上の通貨を供給していることである」
要するに、「赤字財政こそが正常な状態である」と言っています。
なるほど例えば、川崎市などの地方自治体では新年度早々の4月1日から歳出が発生し、歳入が確定するのは翌年3月の年度末です。
ゆえに、行政は歳入よりも先行(借金)して予算を支出することになりますが(実際には内部留保で支払っていますが…)、歳出よりも歳入が上回ってしまうと市民経済から貨幣を吸い上げてしまうことになります。
正常な経済とは、市民経済の貨幣量(アクティブ・マネー)が徐々に増えていくことであり、これを経済成長(市民の黒字)といいます。
ところが、国会議員から地方議員に至るまで、ほとんどの政治家たちが全く逆のことを言っています。
「税金をたくさん集めて政府を黒字にしないと持続可能な社会はつくれない…」と。
また、多くの国民も、そのように信じているところが実に厄介です。
しかしながら、政府(行政)が増税や財政支出の削減といった緊縮財政を行うことは、民間に流通する貨幣の量を減らすこととなりますので、かえって貨幣に対する需要を高めてしまい、実質賃金の下落や失業を増大させるデフレ圧力になってしまうのでございます。
何度でも言います。
政府(行政)が黒字化すれば、その一方で必ず国民は赤字化します。
政府収支 + 民間収支 + 海外部門の収支(資本収支) = 0
これは、この宇宙にいるかぎり絶対的に逃れることのできない恒等式です。
政府の役割は、あくまでも国民の懐を豊かにすることであって、政府の懐を豊かにすることではありません。
25年以上にもわたりデフレ経済を放置し、30年以上にもわたり株主資本主義に基づく構造改革を行なって国民を貧困化したのは、まちがいなく自民党です。