戦争は農耕からはじまった

戦争は農耕からはじまった

人は一生涯に、60トンの水、13トンの食糧、18トンの酸素を消費して死に至ります。

酸素については地球にいるかぎり供給は豊富であり、誰もが安定的に消費することができますが、水と食料についてはそうはいかない。

なので、人間にとって最も必要不可欠なのは、資源としての「水」と「食料」、およびそれらを手に入れることができる「購買力」となります。

ちなみに、ここでいう食料とは食糧(食料の中でも特に主食となるコメや麦などの量食を指す)のことです。

水と食糧、ペルシア風に言いますと水と土でしょうか。

すなわち、水と土地という資源へのアクセスこそ人類生存の根本問題であり、これにアクセスできなくなったら死ぬほかない。

むろんこれは今にはじまったことではなく、人類が穀物の生産をはじめてからずっとそうです。

日本の場合、弥生時代以降はずっとそうです。

では、弥生時代の前、縄文時代はどうだったのでしょうか。

もちろん、縄文時代においても栗の木の栽培とかはやっていましたが、本格的な投資、すなわち灌漑設備や水路、あるいは貯水池をつくるなどの投資をせずに食糧を手に入れていた時代です。

日本でいうと縄文時代ですが、ユーラシアでいうと旧石器時代です。

この縄文文明の経済システムは、人々の生存ということを考えた極めて合理的なものでした。

縄文時代から村という共同体によって生産と分配が行われていましたが、前述のとおり、ここでいう生産は穀物の生産ではなく、例えば木の実の収穫であったり、あるいは漁労、海や川から魚や貝やタコ、そのほかウニ、ナマコを収穫したりして様々なご馳走を得ていました。

それに、猪などの陸上動物などを対象に狩猟も行うなど、肉を手に入れるということもしていました。

ただ、穀物を生産するところまでには至りませんでした。

穀物を生産しないとどうなるのか?

穀物を生産できないと離乳食が作れないため、赤ちゃんがなかなか母親離れできず、その間、母親は次の赤ちゃんを産むことができませんでした。

縄文時代の人口が増えなかったのはそのためです。

逆に言えば、自然の生産力に見合った人口というのが維持されていたと言うこともできます。

日本の人口が増えはじめるのは、穀物生産をはじめた弥生時代以降です。

ちなみに、私たちが学校で習った「紀元前3世紀ごろに朝鮮半島から稲をもった渡来人が大量に入ってきて、彼らが縄文人を駆逐して弥生時代がはじまった…」というのは嘘です。

実際は、縄文人が稲作技術を手に入れて農耕生活をはじめただけです。

これは私が川崎市議会でも指摘したところですが、稲はもともと南方の植物です。

その稲が日本よりも寒冷のところからもたらされるというのはあまりにも不自然です。

ソウルの緯度は新潟市とほぼ同じで、朝鮮半島ではオンドルと呼ばれる暖房装置が発達したほどです。

「そうは言っても、縄文人と弥生人では顔の形が違うじゃないか」という人たちが日本にもいますが(NHKなど)、そりゃぁ、主食が変わったのですから顔の形が変わるのは当然です。

その証拠に、江戸時代の日本人と現在の日本人とでも、顔の形は異なっているではないですか。

明治維新なんて、つい150年前の話です。

それと同じように、縄文から弥生にかけて約100〜150年ぐらいの月日をかけて顔の形が変わっていったものと推察します。

よって、日本人の祖先は日本人(縄文人)なのであって、朝鮮半島から移り住んだ人たちではありません。

さて、話を元に戻しますが、私が言いたかったのは要するに、お米という穀物を生産するようになった弥生時代に入り、私たちの先祖は「投資することで生産性の向上をはかることができる」という経済原則を発見したことです。

そして、穀物の生産量が増えたことで離乳食が豊富となり赤ちゃんの母親離れが進み、女性の出産機会が飛躍的に伸びていきました。

弥生時代に人口が増えたのはそのためです。

ところが今度は、投資の差や人口(労働力)の差が、共同体の経済力に差をもたらすことにもなりました。

しかも投資を行うための「土地」は限られています。

そこで、「土地」という有限の資源を巡って共同体同士が戦争をするようにもなりました。

悲しいかな、戦争は農耕からはじまったわけです。

現に、縄文遺跡からは武器などで傷つけられた頭蓋骨は発見されませんが、弥生遺跡からは明らかに負傷兵の頭蓋骨が発見されています。

また、縄文時代には見られなかった土塁や柵や堀の跡が、弥生時代に入ると現れます。

動物行動学の創始者であるコンラート・ローレンツは「種内攻撃は善である」と言っています。

だとすれば、水と食料がなければ生きていくことができない人間もまた、サバンナの野生動物たちが置かれた境遇と何ら変わらないということか。