明後日の10月15日、いよいよ衆院総選挙が公示されます。
小選挙区制度の性質上、今回の選挙は本来であれば政権交代への期待が高まる選挙となるはずでしたが、受け皿となるべき野党第一党もまた事のほか支持率が低いことから、野党連立が余程にうまくいかないかぎり政権交代はなさそうです。
どうやら、グダグダとなった自公連立がひたすら続くことになりそうです。
さて、選挙の争点なるものは、有権者一人ひとりが個々の判断で独自に持つのが本来の姿だと思うのですが、残念ながら現実はメディアの報道で投票行動が左右される有権者が圧倒的多数です。
選挙を直前にしたメディアの報道ぶりを見ておりますと、「裏カネ問題」や「政策活動費の改廃問題」等々、いわば本質から外れた不毛なアジェンダが強調されており、これではいかにも政策論争が矮小化されそうです。
ゆえにメディアの報道に流されることなく、各候補者におかれては、我が国が抱えている本質的な問題を有権者に提示してほしいところです。
といっても、例によって「日本の財政状況は厳しい、だから…」みたいな、これまたピントずれの問題提起しかできない候補者が与野党を問わずほとんどでしょう。
「日本が財政破綻するぅ〜」として大騒ぎしている人たちが破綻の根拠としているのは、何よりも日本政府の債務残高約1,000兆円という数字です。
因みに、最近の財務省はこれを根拠とせず「金利ある世界」を根拠に切り替えていますが、そのことすらも知らない候補者たちは恥じらいもなく「日本には借金がぁ〜」と街頭で訴え続けることでしょう。
これを聞いた有権者の多くもまた、「日本はこんなに天文学的な借金を抱えているのだから、破綻しないはずがない」と思ってしまうに違いない。
「クニのシャッキン」などと言われてしまうと、ほとんどの人は「日本はそんなに外国から借金をしているのか…」という印象を受けてしまい、返済のことを考え暗澹たる気持ちになってしまうのも無理はないかもしれません。
しかしながら、ここで言う「クニのシャッキン」という言葉そのものが、まずもって嘘です。
正確には「政府の負債」です。
政府の負債とクニのシャッキンは全く別物なのでございます。
政府の負債(国債発行残高=約1,000兆円)とは、純粋に日本政府がこれまで発行してきた貨幣量に過ぎず、これを国民が税金(納税)で完全返済する必要などありません。
信じられないかも知れませんが、政府は国債を発行することで貨幣を発行しています。
国債を発行することで貨幣を創出し、国債を償却(返済)することで貨幣を消滅させるのが政府の仕事です。
一方、政府の負債とは別に、日本国全体(政府、企業、家計)で外国に持っている資産と負債があります。
例えば、2023年末時点において、日本が外国に持っている資産総額は10.6兆ドル(USドル)あり、外国に持っている負債総額は7.2兆ドルあります。
これを差し引きすると、我が国の対外純資産は3.4兆ドルとなり、これだけの対外純資産を持っている国は世界中どこを探してもみあたりません。
すなわち、日本は世界一のおカネ持ち国家なのです。
おカネ持ちかどうかは、純資産で決まります。
個人や家計で考えてみても、たとえ1億円の資産があっても、一方で1億円の借金があるのなら、それはカネ持ちとは言えません。
我が国は外国に多くの資産(工場や株)を持っており、そこから得られる所得や配当金が莫大なのです。
このことを理解すると、「クニのシャッキンでハタンするぅ〜」という言葉が、いかにインチキなレトリックであるかがお分かり頂けるものと思います。
そして、日本政府の国債発行残高がいかに増えようとも、それはただ単に貨幣を発行しているだけで返済不要の借金です。
よって、選挙戦で「クニのシャッキンがぁ〜」とか、「セイフのコクサイザンダカがぁ〜」とか言っている候補者がいたら、その人は財政や経済について何も理解していない候補者です。
そんな候補者が当選しても、経世済民に基づく政治を行うことなど絶対に不可能です。
ぜひ、遠慮なく落選させましょう。
ふさわしい人を選ぶのも選挙ですが、ダメな人を落選させるのもまた選挙です。