きのう、自民党の石破新総裁は国会で首班指名を受けたのち、皇居での総理大臣の親任式及び閣僚の認証式を経て、正式に内閣を発足させました。
私が最も注目した財務大臣には、元大蔵官僚の加藤勝信氏が起用されました。
加藤勝信氏の義父は、農林水産大臣(中曽根内閣)などを歴任した加藤六月氏です。
加藤六月氏は1993年に自民党を離党され、羽田孜氏や小沢一郎氏が結成した新生党から立候補して羽田内閣で再び農林水産大臣に就任されたかたです。
その後、新生党は新進党となり、やがて分裂。
分裂後、加藤六月氏は小沢自由党から熊谷弘氏らが結党した保守党に参画したものの、2000年の総選挙には立候補せず引退されました。
私の記憶が確かなら、おそらく立候補を断念した理由は自民党と保守党との選挙区調整がつかなかったためだったと思われます。
このたび財務大臣に就任された加藤勝信氏は財務省を退官後、義父の秘書官を経て、1998年の総選挙に出馬されました。
義父が自民党を裏切ったこともあって、最初は自民党から公認をもらえず無所属での挑戦となり、あえなく落選されています。
2000年の総選挙では、なんとか自民党(比例中国ブロック)の公認をもらって出馬できたものの残念ながら再び落選されてしまいます。
このとき加藤氏は、義父の選挙地盤だった岡山5区(小選挙区)から民主党(今の立憲民主党の前身)の公認をもらっての出馬も模索されていました。
その過程で加藤氏は「以後、私は絶対に自民党から出馬しません」という誓約書を書かされたとか書かされなかったとか、むろん噂程度の話です。
落選された加藤氏はいったん川崎医療福祉大学客員教授に就任され、2003年の総選挙で自民党からの出馬が実って、ついに初当選されました。
それにつけても、世の中、実に不条理なものです。
中には、親の七光で苦労なく国会議員になることができ、政府や党の要職にも就くことができる人もおられるわけですから。
さて、晴れて財務大臣に就任された加藤勝信氏ですが、同時に内閣府特命担当大臣(金融担当大臣)も兼任して「デフレ脱却」を担当するというのですから、思わず苦笑してしまいます。
なぜなら、最もデフレ対策が嫌いな省庁は財務省ですから。
デフレとは、総需要が不足する経済状態です。
総需要の不足とは、すなわち「使われるおカネの不足」を意味します。
よって、誰かが大量におカネを使ってくれないかぎり、絶対に脱却することができません。(デフレ期におカネを大量に使うことができる経済主体は政府だけ)
それは、火災が発生したら誰かが大量に「水」を使わないと鎮火できないのと同じです。
当然のことながら、大量に水を使うのは消防隊です。
消防隊が鎮火のために使う「水」にも、当然のことながらおカネがかかります。
例えば、川崎市内の民家Aで火災が発生した場合、川崎市の消防局は消火栓から水を引っ張ってきて民家Aの火災を鎮火します。
その時の水道料金は誰が負担するのかというと、自治体持ちです。
厳密には川崎市の水道局(上下水道局)が川崎市の消防局に使用金額を請求しています。
ゆえに、火災が増えれば増えるほどその分、川崎市は支出増(赤字)になります。
むろん、それでいい。
川崎市が「赤字になるから水は使わせない」などと言い出したら、火災を鎮火することはできないわけですから。
ご承知のとおり、財務省は最もおカネを使うのが嫌いな省庁です。
能登半島地震の復興費用さえ、補正予算を組まず予備費で対応させているほどです。
その財務省を率いる財務大臣が金融担当大臣としてデフレ脱却を担当するんですか?
そもそもからして、金融政策でデフレを脱却することなど不可能です。
そのことはすでに第二次安倍内閣の政策により証明されているはずです。
デフレを脱却するためには何よりも財政政策が必要なのであって、金融担当大臣にデフレ脱却を命じている時点で、すでに石破内閣は終わってます。
ちなみに、水は使ったら無くなりますが、おカネ(貨幣)は使っても無くなりも消えもしません。