総務省は郵便料金の値上げを容易に認める制度の検討をはじめました。
小泉進次郎君のお父様が民営化した日本郵便にとっては、「硬直的な料金規制は経営の足枷だ」とのことです。
当時、郵政民営化の必要性を唱えていた人たちは「民営化すれば郵便料金はもっと安くなる」と言っていたのに、現実はこのざまです。
まこと、怒りが込み上げてくるほかない。
そのうえ、全国に約2万箇所ある郵便局はアフラックのがん保険販売所にされたのは周知のとおりです。
仕事柄、私はよく郵便局を利用しますが、局員も人手不足なのか病院の待合室並みに待たされることが多い。
郵政3事業の民営化は明らかに失敗でした。
これを「公営」に戻すことこそ検討されて然るべきなのに、「値上げを容易に認める新制度」を検討するとのことです。
いつの世にも改革を叫ぶ者はいます。
しかし残念ながら、その改革が本当に正しかったのかどうか、社会科学的な見地からの検証が為されることは少ない。
郵政3事業の民営化もその一つで、伊藤三郎(元川崎市長)の「総量規制」の成果を検証しない川崎市と同じです。
さて、今度はご子息の進次郎君が「農協改革」を叫んでいます。
彼いわく、「日本の農業を世界に打って出る農業にするためには、農協は足枷な存在」なのだとか。
どうやらこのおぼっちゃま君には、農協の役割とは何かを理解するスマートさがないらしい。
全国に約700ある地域農協では、商社機能を果たす「JA全農」が農産物や肥料等を売買する経済事業を行っていますが、これは我が国の農家を守るため(=日本の食料安全保障を守るため)にどうしても赤字事業にならざるを得ない。
それでも農林中金(銀行)やJA共済(保険)という二つの金融事業が生み出す利益によって、農協全体としての経営は支えられています。
すなわち、組合方式の農協と全農が農林中金と共済の利益を活用することで、我が国の食料生産と流通を維持してきたのです。
赤字の郵便事業を、黒字の郵貯・簡保が支えてきたのと同様です。
株式会社の論理に従えば「利益が出ない事業は撤退」という話になるのでしょうが、そんなことをされて一番困るのは私たち日本国民です。
おぼっちゃま君は「日本の農業を自由競争にさらして世界(輸出)に打って出よ」と言うけれど、我が国の国土は山がちなため、「地平線の遥か彼方まで農地」である米国や豪州の農業に初めから勝ち目などありません。
そもそも、農業が輸出で利益を上げる必要がない。
肝心なことは、どんな非常事態(災害や戦争や天候不順など)に見舞われても、国民の胃袋を満たせる農業を構築することです。
よって、食料安全保障を成立させるためには、農協機能を維持しつつ、政府(国家)が財政支出により農家を保護しなければなりません。
それは、どこの国でも行っていることです。
おぼっちゃま君にはわかるまい。