日米金利差の要因は財政政策の違い

日米金利差の要因は財政政策の違い

インフレファイターである日銀は、とにかく物価上昇が嫌いだ。

また、日銀は常に「金融政策の幅」を持ちたがるので、そもそもゼロ金利であること自体が許せない。

なので例え0.01%でも、即ちほんの僅かでも「早めに金利を引き上げておきたい」という心理状況におかれています。

僅かでも金利を引き上げておけば、景気が急激に落ち込んだ際、政策手段としての「利下げ」の余地を確保できるからです。

ゆえに日銀は、実体経済の見極めを蔑ろにして利上げを急ぎする傾向にあります。

7月31日の利上げは、それが顕著でした。

植田総裁は記者会見で「賃金が順調に上がっているから利上げした」などと語っていましたが、実質賃金は26ヶ月連続でマイナスでしたので、明らかな嘘です。

中央銀行である日銀が利上げすべき時期というのは、どういうときでしょうか。

むろん、企業や家計におカネを借りにくくさせたいときです。

例えばバブル期などが典型ですが、景気が過熱化し民間の企業や家計がおカネを借りまくり、消費や投資が拡大し過ぎて総需要に対し供給能力が追いつかなくなって、インフレ率が適正な水準を超えて上昇していくときです。

このような場合には、日銀は利上げすることで「企業や家計の皆さん、ちょっとおカネを借りすぎですよ。落ち着いてくださ〜い」とやるわけです。

今の日本は、確かに消費者物価が3%ぐらいに上昇しているのですが、これは輸入物価の上昇が最大の要因であって、企業や家計がおカネを借りまくっていることが要因とはなっていません。

国内需要は未だに縮小中であり、民間の資金需要が高まっているわけでもありません。

にもかかわらず、日銀は利上げを決行したのです。

なかには「円安だから利上げは正当化される…」などと言う人もいますが、中央銀行が為替レートのために金融政策を動かすことなどあってはならないのです。

そもそも為替レートの所管は日銀ではなく財務省なのですから。

まず、どうして最大で5%ちかくもの日米金利差が生まれたのかを考えればいい。

それは、財政支出を拡大した米国政府と、財政支出を拡大しなかった日本政府という財政政策の違いに拠ります。

米国は2019年から2020年にかけて、コロナ対策や経済対策のために政府の負債残高を1.3倍にまで拡大しました。

1.3倍の米国に対し、日本はというと1.1倍です。

もしも日本が米国並みのコロナ対策を行っていたら、300兆円規模にも及ぶ国民を救うための財政支出ができたわけです。

それが具現化していたなら、日本経済は確実にデフレから脱却して米国と同じようにデマンドプル型インフレとなっていたでしょうから、晴れて日銀はFRB(米国の中央銀行)と同じように利上げに踏み切ることができたわけです。

私たちの生活が、円安ドル高(輸入物価高騰)、すなわちコストプッシュ型インフレで苦しめられることも無かったでしょう。

つまり、日米の金利差の最大の要因は、為替レートを所管する財務省が主導する緊縮財政にあったのです。

それなのに財務省やメディアは日米金利差を日銀の責任に仕立て上げ、その圧力に屈した植田日銀は「賃金が上昇しているから…」などと理屈にならぬ理屈で利上げしたのです。