ICTやSNSの発達と普及により、既存メディアが報じない重要な政治情報を、誰でもネット等を通じ簡単に入手し知り得ることのできる時代になりました。
と同時に、ネット上で大量に流される情報のなかには胡散臭い眉唾物もあります。
玉石混交の時代、どの情報を信頼し、どの情報を廃すべきなのかを冷静に見極める力と感性が問われるようにもなったわけです。
昨今では「日米合同委員会陰謀論」なるものがでてきています。
例えば、日本政府が行っている「緊縮財政」も「消費税増税」も「防衛費の増額」も、あるいは小泉内閣時代に断行された「郵政民営化」も、これらはことごとく日米合同委員会という密室会議を通じて日本に押し付けられたものだ、という陰謀論です。
日米合同委員会は、たしかに毎月2回、西麻布にある『THE NEW SANNO』というホテル(米国軍関係者向けの宿泊施設、保養所、社交場)で開催されています。
合同委員会の出席者は米軍幹部と日本の外務省と防衛省の高官で、会議の内容は非公開です。
元総理の鳩山由紀夫氏も「この会議は非公開で、総理の私にすら報告がなかった…」と言っていました。
しかしながら、ここで日本の経済財政政策が米国の圧力により決定されているというのは嘘です。
当該委員会は、あくまでも「日米地位協定」の運用について協議するための機関です。
その合意事項については議事録は全文公開されないため、たしかに密室といえば密室なのですが、要旨のみは公開されています。
日本政府に様々な要請があるのは事実ですが、それはあくまでも日米地位協定の運用に関するものであり、経済財政政策について要求されることはあり得ない。
現に、郵政民営化を要望したのはUSTR(米国の通商代表部)であったし、農協改革を要望しているのは米国の商工会議所です。
消費税に至っては、米国政府が「(消費税は)輸出戻し税だから止めろ」と言っているぐらいですから、合同委員会で「消費税率を引き上げろ」などと要求するわけもない。
そもそも経済政策とは無関係な米軍幹部が消費税の増税などを要求するわけがない。
問題は、そこで取り決めた合意事項 の「実施細則」は、日本の憲法や法律を越えて機能していることです。
例えば、郵政民営化にしても、消費税増税にしても、緊縮財政にしても、最終的には日本国民が選挙で選んだ国会議員たちが法律に基づいて審議し、多数決をもって決め、それを法律に基づいて執行しています。
要するに、日本の経済財政政策はあくまでも憲法に基づき国民が選んだ国会議員たちが、憲法に基づいて決めて行っていることなのです。(これはこれで、違う意味で問題なのですが…)
一方、日米合同委員会の合意事項はちがいます。
日本の憲法や法律を越えて執行されています。
その典型例は「横田空域」です。
横田空域とは、1都8県(東京都、栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県)に及ぶ広大な空域のことで、場所によって高度は異なりますが(約3,700mから最高で約7,000m)、この空域は米空軍の管制下にあり、民間航空機が当該空域を飛行する場合には、米軍による許可と航空管制を受けなければならないとされています。
すなわち、横田空域は我が国の航空法が適用されない、超法規の存在なのです。
これこそまさに、日米合同委員会で決定された米国の権益です。
そのお陰で、羽田空港に着陸する旅客機は横田空域を避け、千葉県上空を大きく余計な旋回をしながら羽田の滑走路に進入しなければならないのはご承知のとおりです。
横田空域は一つの事例ですが、我が国の領土・領海・領空には、残念ながら我が国の主権(憲法や法律)の及ばない地域が存在し、それらが日米合同委員会という密室で決定されているのでございます。
これは陰謀論でもなんでもなく、単なる事実です。
この現実を変えるにはどうするか。
私たちは現実から目をそむけてはならない。
在りもしない陰謀論に陥ってしまっては負であり、永遠に属国のままです。