消費税は正規雇用の敵

消費税は正規雇用の敵

先週、神奈川県社会保険労務士会の皆様との業界ヒアリングを行いました。

当日は実にざっくばらんな意見交換がなされ、誠に有意義な時間を頂戴できましたことに深く感謝しております。

とりわけ、社会保険労務士の皆さんがお持ちになられているノウハウを、行政として取り入れなければならない点が多々あることを理解いたしました。

さっそく、9月定例会において行政に投げかけて行きたいと思います。

一方、こうした業界関係者との意見交換は私としても実に貴重な機会でしたので、消費税の問題について社会保険労務士の皆様はどのようにお考えになられているのかを伺いました。

我が国においては、消費税の税率が引き上げられていくに連れて、正規社員から派遣社員などの非正規社員へ、あるいは正規社員としての契約から事業主としての契約へと替えられていくという流れができました。

すなわち、正規社員を減らすことで消費税負担を軽減しようとする企業が明らかに増えたわけですが、そのことが社会保険労務士の皆様の業務にどのような影響を与えたのかについて私は知りたかったのです。

ところが、私の質問の仕方が悪かったのかもしれませんが、すこし議論が噛み合わないところがありました。

というより、おそらくは「消費税は間接税であり、それを負担しているのはあくまでも消費者である…」という固定観念があられたようです。

もしも、そうした誤解が労務関係の専門家にすら蔓延しているのだとすれば、やはり消費税ほど厄介な問題はありません。

そもそも「消費税が間接税である…」というのは根本的な誤解です。

間接税とは、①税を負担する人、②税を納める人、①と②がそれぞれ異なる税のことです。

それに対して直接税は、①と②を同一とする税のことです。

例えば典型的な間接税である入湯税は、湯に入る利用者が負担し、それを預かった事業者が税務署に納めています。

一方、消費税の場合、負担する人も、税務署に納める人も共に事業者です。

平成元年の東京地方裁判所の判例でも、「消費者は、消費税の実質的負担者ではあるが、消費税の納税義務者であるとは到底いえない」とされています。

納税義務を負っているのは法律的にも事業者だからです。

すなわち、事業者は消費税の納税義務を負い、なおかつ税務署に納める義務をも負っているのでございます。

多くの国民が「消費税は消費者が負担しているもの…」と誤解しているのは、事業者が消費税負担を価格に上乗せするかたちで消費者に転嫁しているに過ぎないからです。

では、消費税は事業者の何に対して課税されているのか。

それは、売上から課税仕入れを差し引いた金額(利益+非課税仕入れ)に対してです。

ここで言う「非課税仕入れ」に相当するのが、正規社員の給与です。

だからこそ多くの企業は正規社員から派遣社員や事業主契約に切り替え、できるだけ人件費を消費税の課税対象とならない「課税仕入れ」に組み入れることにより消費税負担を軽減しようとしたわけです。

我が国に派遣社員や個人事業主が増えたのはそのためです。

そして政府は、昨年10月からインボイス制度を導入し、それまで非課税対象だった個人事業主からも消費税を巻き上げています。