言わずもがな、通貨発行権は政府にあります。
我が国においては、円を通貨単位とする紙幣(通貨)を発行しているのは、日本政府の子会社である日本銀行です。
しかしながら、実は政府(日銀)以外にも通貨を発行している民間機関があります。
それは金融機関です。
金融機関は、その経済活動のなかで「預金」という通貨を発行しています。
通貨には、現金通貨と預金通貨の二種類があることを理解する必要があります。
現金紙幣は金融機関が日銀当座預金を「引き出す」かたちで発行されますが、預金は金融機関がおカネを「貸し出す」かたちで発行されています。
因みに、よく誤解されていますが、金融機関(銀行)は「どこかから通貨を調達し、それを第三者に貸し付けている」わけではありません。
無から預金を創造しています。
これを信用創造と言います。
さて、発行された現金通貨及び預金通貨の総量を「マネーストック」と言います。(2004年3月までは、マネーサプライと言いました)
日銀のHPでも、マネーストックは次のように定義されています。
「金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量」
具体的には、一般法人、個人、地方公共団体などが保有する「現金紙幣」と「預金」であると。
但し、金融機関や中央政府が保有する金融資産は含まれず、日銀が金融機関に発行している「日銀当座預金」も除かれます。
マネーストックは、景気動向をみるうえで重要な指標でもあります。
デフレ経済が払拭され、景気が良くなっていくためには、結果としてマネーストックは増えていかなければなりません。
なぜなら、景気が良くなると、企業や個人はおカネを借りようとするからです。
そして、誰かがおカネを借りると、必ず誰かの預金通貨(もしくは現金通貨)が増える、すなわちマネーストックが増えることになります。
しかしながら、上のグラフをご覧のとおり、我が国のマネーストックは下がり続ける一方です。
グラフをみますと、2020年から2021年にかけてマネーストックが上昇しています。
これは、コロナ禍により政府が財政支出を拡大し「持続化給付金」や「特別定額給付金」などで国民や事業者の預金を増やしたからです。
その財源は、むろん国債発行(政府債務の拡大)です。
お解りでしょうか?
誰かの負債は、必ず誰かの資産です。
つまり、政府の負債は必ず国民の資産となるのであって、日本政府は国民の資産を原資にして国債を発行しているのではございません。
一方、景気が過熱化しインフレ率が過度に上がりだすと、当然のことながらマネーストックも過度に上昇していくことになります。
政府が財政を引き締めたり、増税をしたりするのは、そういう事態になってからの話です。
マネーストックが下がり続けているなか、財政を引き締めたり、増税をしたり、社会保険料を引き上げたりする〇〇はいない。