デフレと緊縮財政

デフレと緊縮財政

きのう(7月9日)、内閣府が第1四半期(2024年1〜3月期)の需給ギャップ(改定値)を発表しました。

需給ギャップとは、日本経済がもつ潜在的な供給力と実際の需要(投資+消費)との差です。

「供給<需要」だったらプラスとなりインフレ、「供給>需要」だったらマイナスとなりデフレを指します。

改定以前はマイナス(供給>需要)1.1%としていましたが、改定後はマイナス1.4とのこと。

内閣府によれば、「(マイナス1.4%ということは)金額にすると1年間で約8兆円の需要不足が生じている」とのことですが、いつも言うように内閣府の推計は需給ギャップ(デフレギャップ)をできるだけ小さく見せるように細工されていますので、実際には10兆円以上、いやもしかすると15兆円以上の需要不足があるものと思われます。

因みに、2019年の第4四半期以降、需給ギャップがプラス化した四半期はたった1度だけです。

上の表でいうと、1997年以降の日本経済は向かって左側の状態(デフレギャップ)にあります。

なぜ1997年からデフレなのかと言いますと、その年から日本政府(当時、橋本内閣)が緊縮財政をはじめたからです。

1991年に昭和バブルが崩壊し、バランスシート不況に見舞われた企業が投資を抑制しはじめたことで需要が縮小。

それでも1996年までは政府が支出を拡大させることで需要を創出していたので日本経済がデフレに陥ることはありませんでした。

ところが1995年、当時の武村大蔵大臣(村山内閣)が『財政危機宣言』なるインチキ宣言を発したため、1997年から緊縮財政がはじまることになったのです。

バブル崩壊 + 政府財政の引き締め

これこそが、デフレ創造の最大要因でした。

デフレ状態が継続すると、実質賃金が下落していくばかりでなく、我が国の潜在的な供給力が徐々に毀損されていくことになります。

能登半島地震の復興が遅々として進まないのは、復興のために必要な供給力が不足しているからです。

例えば、石川県の建設業許可業者数をみますと、2000年には7,237社もあったのに、2023年には5,391社にまで減っています。

デフレという需要不足が続いたこと、及び公共投資が減らされ続けてきたことで、この約20年間で4分の1もの建設業者が減ってしまったのです。

むろん、建設業者数が減ったのは石川県だけではありませんし、毀損された供給力は建設業だけではありません。

しかし言うまでもなく、建設(土木+建築)分野における供給力の毀損は、災害が発生した際の即応力、復興力に大きな影響を及ぼすことになります。

1990年代以降、我が国では公共事業悪玉論が盛んになりました。

今なお、「無駄な公共事業」を声高に叫ぶ政治家や候補者が後を絶たない。

紺谷典子(こんや ふみこ)さんという経済学者の方が、新聞などで公共事業を否定するような論調が突然増えたため、財務省に電話をして確認をしたそうです。

「これって、あなた方(財務省)がやっているの?」と。

すると、電話応対した財務官僚は悪びれることもなく、「そうですよ!」と答えたという。

しかもその財務官僚は「マスコミが公共事業や公共投資を否定するための資料を用意して、ちゃんと配布しましたから…」と言い放ったそうです。

言わずもがな、マスコミの影響力は大きい。

日本国民の多くが、今なお「公共事業は無駄だぁ」と思い込まされているのには、こうした背景があったのです。

むろん、「ニホンはシャッキンでハタンするぅ〜」というプロパガンダもまた、財務省がメディアを通じて垂れ流しているデマです。