理解に苦しむNTT法改正

理解に苦しむNTT法改正

現在開会中の通常国会に、いわゆる「NTT法」の改正案が提出されています。

正式な法案名は「日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案」です。

改正理由について政府は「我が国の情報通信産業の国際競争力を強化するため…」としていますが、本当の理由は防衛財源を捻出するためにNTT株を売却したいだけです。

防衛財源など、通貨発行で充分に賄えるのに…

言うまでもなく、これまで国がNTT株を保有していたのは(全てではない)、NTTの持つ資産や技術が国家の経済安全保障に関わる重要インフラだからです。

そもそも民営化したこと自体が間違いだったのですが、せめて国が株式を保有することで安全保障を保つというギリギリの防衛ラインだったわけです。

にもかかわらず、今度は株を民間に放出するという実に正気の沙汰とは思えぬ所業です。

おそらくは、NTT株を喜んで買うのは外資でしょう。

それだけではありません。

改正案では、外国人役員に関する規定も緩和されます。

複数の外国人が役員に就任すると、我が国の通信インフラはどうなるのか…

まず株式資本主義の観点から「短期で利益を上げろ」となりますので、株主利益を損ねるような不採算部門は簡単に切り捨てられることになります。

こうなるとユニバーサルサービスを維持することはできない。

国鉄が民営化されて以降、地方路線が次々に廃線されているのと同じです。

外国人の役員や投資家にしてみれば、その沿線に住む人たちの生活なんてどうでもいい。

よって、NTT法が改正されれば、日本の通信ネットワークが寸断される可能性が高い。

あるいは、大量のNTT株をもつ外国人投資家が中国人や中国系ファンドになったらどうなるか。

むろん彼らは中共の意向に従って、我が国の通信を歪めようとするにちがいない。

現在の我が国にある産業のほとんどは何らかのかたちで通信に依存しているわけで、それを中国に抑えられてしまうわけですから実に恐ろしい。

いま政府が進めようとしているGX(グリーントランスフォーメーション)にだって深刻な影響を及ぼすであろうに。

むしろ今やるべきは、NTT株の全てを政府が保有し(再国有化)、ほか主要な通信会社の株式の何%までを政府が保有しなければならないなどの規制を強化することです。

繰り返し述べますが、防衛費の財源確保は通貨発行で充分に可能です。

ゆえにNTT法の改正は、貨幣論(財源論)としても間違っていますし、政策論としても実に稚拙で国家観の欠片すら感じない。