川崎市議会など地方自治体の議会には、当該自治体の公益に関する事件について国会または関係行政庁に対し「意見書」を提出することが地方自治法(第99条)において認められています。
むろん、議会での議決を得た上で、です。
ゆえに、川崎市議会においても定例会が開催されるたびに、それぞれの会派から何らかの意見書案が市議会に提出され議決されるのが常です。
可決されれば「意見書」として国や関係行政庁に提出されますが、否決されることもしばしばです。
昨年(令和5年)12月の川崎市議会定例会では、日本共産党川崎市議会議員団という会派が「ハマスとイスラエルに対し即時停戦のための交渉及びガザ地区における人道支援に向け、積極的に関与することを強く求める」という内容の意見書案を議会に提出しました。(意見書案第16号)
結果は、共産党を除く全ての議員が反対して否決となりました。
その意見書案について反対する会派は、なぜ当該意見書案に反対するのか、あるいは当該意見書に賛成する場合は、なぜ賛成するのかを表明する機会が制度的に設けられています。
賛成する場合は「賛成討論」、反対する場合は「反対討論」というように、なぜ賛成もしくは反対するのかの意見表明をする機会が議会にはあります。
因みに、私のような無所属の議員には、そうした機会は制度的に認められていません。
ところが上記(意見書案第16号)の意見書案については、それぞれの会派が反対討論を行わないままに採決に至り否決となりました。
そのため「なぜ、上記意見書案が川崎市議会では否決されたのか…」という疑問をお持ちになられた川崎市民が少なからずおられたようです。
私にも「どうして反対をされたのですか?」という市民からの問い合わせがありました。
残念ながら既存メディアは、なぜ否決されたのか、を丁寧に報道してはくれません。
よって本日のブログでは、なぜ私が日本共産党川崎市議会議員団が提出した意見書案(意見書案第16号)に反対したのかを以下のとおり説明させて頂きます。
昨年(令和5年)12月の市議会定例会で共産党さんが当該意見書案を提出した時点において、既に日本政府は国際社会と協調しながら積極的な人道支援を行う方向性を明確に示しており、国に対して当該内容の意見書を提出するには完全に時期を逸しておりました。
ご承知のとおり、昨年12月12日に国連総会は緊急特別会合を開き、即時の人道的停戦を求める決議案を日本国を含む153カ国の賛成で採択しています。
当然のことながら、採択される以前から日本政府はその方向性を示しておりましたし、政府として相当額のおカネを支出することも既に決まっておりました。
というより日本政府は、令和5年10月7日のハマスによるイスラエル侵攻後すぐに、1,000万ドルの緊急無償資金協力を実施することを、この段階において既に決定しています。
それは、共産党さんが市議会に意見書案を提出するはるか以前の令和5年10月24日のことです。
もしも日本政府が、そうした方向性を全く示していなかったとすれば、共産党さんご提案の意見書案に対し賛成しない選択はむろんありませんでした。
しかしながら、共産党さんが当該意見書案を提出された段階において、経済的支援を含めた人道支援は既に行われており、それを拡充することは規定路線、当然の流れとなっておりました。
むしろ、あの時点では次のフェーズ、即ち具体的な支援内容について議論を深める段階にあったものと考えます。
例えば、よく知られているように、戦時下にあるなかにおいてはなかなか支援物資が現地の人々に届かないことがしばしばです。
いかなる支援物資を、いかなるルートで、かつ効果的に支援するかの具体案が、もしも共産党さんご提案の意見書に示されていたのなら喜んで賛成させて頂いたことでしょう。
あるいは、双方に停戦させるための外交的背景、即ち軍事的手段をもたぬ我が国が、リアリズムを求められる国際社会の中でいかにして行動していくのかの議論を具体的に行う段階に、いま尚あるものと認識しています。
時期を逸した意見書は、かえってこれまで積み上げてきた議論を後退させることにもつながりかねません。
以上が、私が共産党さん提出の意見書案第16号に反対した理由です。
他の会派や議員たちの反対理由についてはわかりません。