イランがイスラエルに対し、多数の無人機やミサイルによる大規模な攻撃を行いました。
むろん、今月1日に在シリアのイラン大使館が攻撃されたことへの報復かと思われます。
イランがイスラエルを直接攻撃したのは史上初のことではないでしょうか。
報道によれば、イスラエル側は迎撃システム「アイアンドーム」などを駆使して、そのほとんどを迎撃したようですが、今後のイスラエルの出方によっては第5次中東戦争に発展するのではないかとの懸念が広がっています。
因みに、今回のイランの攻撃は、イスラエルの迎撃能力を試す意味合いもあったのかもしれません。
さて、昨年9月22日、イスラエルのネタニヤフ首相が国連で次のような演説を行ったのをご存知でしょうか。
「サウジアラビアとの歴史的和平という、劇的なブレークスルーの節目に我々はいると信じている」
「パレスチナ人に新たな和平条約に対する拒否権を与えてはならない。彼らはアラブ世界の2%にすぎない」
このように述べつつ、ネタニヤフ首相はイスラエルによる“新しい中東地図”を国連の場で宣伝したのでございます。
イランの同盟勢力であるハマスがイスラエルに奇襲攻撃を仕掛け、約1200人の市民と兵士を殺害し、200人以上を人質にとったのは、その2週間後(10月7日)のことです。
むべなるかな。
ネタニヤフ政権による司法改革をめぐりイスラエル国内が分裂し弱体化していたことも、ハマスに混乱した社会への攻撃を誘発させたのかもしれません。
いずれにしても「和平なしでも繁栄できる…」とイスラエル国民に約束してきたネタニヤフ首相への批判は免れないことでしょうし、さらに言えば、10月7日のハマスによる攻撃はネタニヤフ首相の約束は中身が伴っていなかったことを証明したことにもなります。
一方、バイデン米大統領は、イスラエルのいかなる報復措置にも「加担しない」と早々に表明しているようですので、ネタニヤフ首相は更に苦しい立場に追い込まれることになるかもしれません。
あるいは国内での分裂騒動の目を国外に向けるため、ネタニヤフ政権がイランに対し強行にでることも考えられます。
中東情勢が暫く不安定化するのは避けられないところでしょう。
私はここ数年「時代は再び第一次世界大戦前の様相を呈してきた」と指摘してきましたが、その傾向はますます強まっています。