今回の裏金問題により安倍派幹部ら39人への処分が下された日、奇しくも自民党本部では財政規律を重んじる、いわゆる緊縮財政派の巣窟「財政健全化推進本部」の会合が開かれました。
裏金問題が露呈するまでは最大派閥の安倍派を中心に積極財政派が勢いをつけていましたが、派閥解散と幹部失脚によってその発言力は著しく低下しています。
べつに陰謀論を唱えたいわけではありませんが、もしも安倍派が積極財政論に転じていなければどうなっていたのでしょうか。
さて、政府は来年度(2025年)には改めて「特例公債法」を国会で通さなければなりません。
一方、2025年度のPB(基礎的財政収支)黒字化目標は達成不可能であることが濃厚となったため、財務省は新たな財政規律目標を設定するにちがいありません。
ちなみにですが、そもそもPB黒字化目標と財政破綻にはなんの因果関係もありません。
「関係がある…」と言っているのは財務省をはじめとした緊縮財政派だけです。
上のグラフ(日本・アルゼンチン・ギリシャ・レバノンのPB対GDP比率)をご覧のとおり、21世紀に入って現実に財政破綻(デフォルト)したアルゼンチン、ギリシャ、レバノンをみますと、3カ国とも日本に比べ、そこそこにPBを黒字化していたことがわかります。
例えば、レバノンは2020年にデフォルトしましたが、2002年以降は基本的に黒字でした。
それに対して、我が日本国は常にPBは赤字で、平均するとマイナス5.1%になります。
ギリシャとアルゼンチンの平均値は、マイナス1%台です。
にもかかわらず、日本は一度も破綻することなく、ギリシャ、アルゼンチン、レバノンは見事に財政破綻したのでございます。
なぜ?
その理由は簡単です。
我が国のみが、自国通貨建てで国債を発行できる国だからです。
例えばユーロ加盟国のギリシャは共通通貨ユーロで国債を発行しなければならないし、アルゼンチンとレバノンもまた外貨建てで国債を発行しなければならない国だったのです。
ただ、それだけ。
例えば、ドルという外国債を発行しなければならないレバノンなどは、どうしてもPBを黒字化しなければならない理由がありました。
彼の国では、国内においてモノやサービスを生産する力が弱いために常に貿易収支は赤字です。
ゆえに、自国通貨(レバノン・ポンド)をドルで買い支え、固定相場制を維持する必要がありました。
ドル建てで国債を発行せざるを得ないのはそのためであり、PB黒字化はいわばその賜物です。
要するに、外国債の発行国ではPBが黒字でも破綻します。
ましてや、自国通貨建てで国債を発行できる日本国が、PBを財政規律目標にすることなど実に馬鹿げています。