実体経済を反映せぬ株価

実体経済を反映せぬ株価

きのう(4月8日)、厚生労働省から2月の実質賃金が発表されました。

実質賃金(現金給与総額)は前年同月から1.3%減少で、減少率は1月の1.1%からさらに拡大しました。

ついに23カ月連続のマイナスですね。

23カ月連続のマイナスは、リーマン・ショック前後の2007年9月から2009年7月まで以来で、比較可能な1991年以降の過去最長に並んだとのことです。

要するに物価の伸びに賃金が追いつかない状況が続いています。

ちなみに、1月に比べて実質賃金のマイナス幅が増えたのは、物価(持ち家の帰属家賃を除く総合)の上昇率が上がったからでしょう。

今朝のニュースでも、白菜やキャベツの高騰が話題になっていました。

実質賃金を変動させる要因は、生産性と労働分配率です。

春闘での大手企業の賃上げは、主として労働分配率の引き上げにより実施されることになりますが、生産性の向上による賃上げはまだまだ期待できません。

なぜなら、デフレが払拭されない状況下では企業としても生産性向上のための投資を行い難いからです。

大手企業はともかく、はたして賃上げが中小企業にまで及ぶのかどうかですが、中小企業もまた生産性向上のための投資を行いづらいし、といって大手に受注価格を叩かれるような状況が続けば、労働分配率を引き上げることすらできないでしょう。

実質賃金が23カ月連続でマイナスとなっている一方、日経平均株価が4万円に迫る勢いであることをもって「景気は悪くない…」と発言するTVコメンテーターもいます。

しかしながら、株価はあくまでも金融経済の世界であり、実体経済の世界とは異なります。

簡単に言うと、実体経済は「働くことで所得を稼ぐ人たちの世界」であり、金融経済は「資産を金融資産で運用する人たちの世界」です。

上のグラフのとおり、日経平均株価がどんなに上昇しても、実質賃金はそれと反比例するように下がり続けています。

これは、2000年代以降の日本経済がいかに株主資本主義を追求してきたかの証左でもあります。

株主利益の最大化は、労働賃金の最小化によってもたらされてきたと言っていい。

むろん、所得を稼ぎながら資産を運用している人もおられるでしょうが、所得で稼ぐ人たちがいなければ一国の経済は成立しません。

ゆえに、実体経済で所得を得る人たちを豊かにすることこそが、経世済民の基本です。