財務省は安全保障問題に口を挟むな

財務省は安全保障問題に口を挟むな

2023年9月末時点の資金循環統計をみますと、日銀の国債保有比率は53.86%に及んでいます。

政府が新規国債の発行量を抑制しているため、日銀が量的緩和を続けるかぎり、この比率はどんどん高くなっていきます。

むろん、それで何か政府財政に深刻な事態が生じるわけではありませんが、市場の国債が枯渇してしまうと、長期資金を運用しなければならない金融機関にとってはさすがに困りごとではないでしょうか。

その意味でも、新規国債の発行(財政支出の拡大)が求められています。

さて、世界最大の半導体受託生産会社であるTSMCの熊本第1工場の整備に、政府は最大で4,760億円を補助することが既に公表されていますが、さらに第2工場への補助も明らかになりました。

追加の補助額は7,300億円程度となる見通しのようです。

一方、北海道での工場建設を決定しているラピダスについても、政府は3,000億円程度の補助を入れるとのことです。

ラピダスは、世界でも生産技術が確立されていない2ナノメートル半導体の量産を目指しています。

これらの補助に経済産業省は、なんと4兆円の予算を投じます。

緊縮財政主義の政府が、これほどの予算をつけているのは、おそらくは米国様のご意向かと思われます。

さすがの財務省でも、国民が選んだ国会議員の言うことなんかに耳を傾けることはなくとも、米国様のご意向には逆らえないのでしょう。

それでも、新たな工場を建設するためにSONYが申請した3,000億円の補助については、財務省は「待った」をかけたらしい。

経済産業省は補助する予定だったらしいのですが、財務省が許可しなかったようです。

財務省が許可しなかった理由がすごい。

「SONYは利益を出しているから…」

そもそも半導体関連の補助は政府が国家戦略として行っているわけですから、当該企業が利益を出していようがいまいが関係ないだろうに…

半導体がなければ、コンピューター、スマホ、エアコン、自動車、戦闘機、空母など、あらゆる電気製品が製造できなくなります。

とりわけ、10ナノメートル以下の微細なトランジスタの製造については、TSMCが90%の世界シェアを持っていますので、もしも台湾が中国に統一され、TSMCが中国の手中に入ってしまったら大変な事態です。

そうしたリスクを抱えているからこそ、TSMCの熊本工場に1兆円以上もの政府補助を入れているわけです。

経済産業省が所管しているからビジネスの話のように見えますが、半導体の確保は明らかに安全保障問題です。

人命よりも財政収支の均衡のほうが大事だと思っている財務省などに、安全保障問題について口を出させてはならない。