優先されるべきは復旧・復興

優先されるべきは復旧・復興

能登半島地震からの復旧・復興にむけ、去る16日、国交省は北陸地方整備局に「能登復興事務所」を設置しました。

設置目的は「国が権限代行などによって行う復旧・復興事業を迅速に進めるため」とのことです。

とりわけ、国交省は能越自動車道や国道249号沿岸部の本格復旧、沿線の地すべり対策、河原田川の河川・砂防事業を急いでいるようです。

新設された「能登復興事務所」は、被災自治体からのインフラの復旧・復興に関わる技術的な相談等も受けたり、関連機関とも連携したりもするとのことです。

さて、もともと被災地域は道路インフラが脆弱で、バックアップルートもほとんど整備されていない状態でした。

そのため、地震と津波により各所で道路が寸断され、人員・物資を運ぶことが極めて困難な状況に陥りました。

海路で運ぶにしても、港湾が機能していなければならないわけですが、港湾施設も津波被害を受けてしまいました。

そこで、多数のヘリコプターを飛行させることによる輸送手段が採られました。

被災している知人から聞いた話では、ヘリコプターが飛行する際の轟音によって、夜はなかなか眠れなかったらしい。

それほどに現地では複数のヘリコプターが活躍したようですが、それでも能登半島全域をカバーできるほどの供給能力はなかったようです。

ヘリコプターで物資や人員を輸送しても、いずれかの拠点に降ろし、そこから陸路で運び込む必要があるのですが道路が各所で途絶しているわけです。

要するに、非常事態発生時には様々な制約条件が発生しますので、平時から非常事態という「需要」を想定し、交通インフラや供給手段を準備しておく必要があるということです。

我が国は1997年にデフレ経済に突入して以降、長きにわたる総需要の不足から、経済活動の虎の子である「供給能力」がひたすら毀損され続けてきました。

とりわけ防災部門では、土木・建設業の業者数自体が減り続けました。

例えば、石川県の建設業許可業者数は2000年以降、25.5%も減少しています。

ことし2024年は、いわゆる「2024年問題」(土木・建設分野の残業規制強化)があり、これだけでも供給能力の削減ですが、それに加えて「大阪万博」での建設需要があり、そこに能登半島地震の復旧、復興の需要が加わったわけです。

つまり、政府の愚策(緊縮財政と公共事業費の削減)により「供給能力」が削減され続けたところに、残業規制と新たなる需要が重なる深刻な事態となったのです。

何度でも言いますが、問題はおカネではなく「供給能力」です。

下のグラフのとおり、内閣府が発表している資料をみても建設技能者の供給能力不足は明らかです。

およそ30年間にわたり毀損され続けた土木・建設能力によって、能登半島地震の復旧・復興と大阪万博の需要を満たすことは困難であり、ほぼ不可能です。

そもそも、大阪万博だけでも不可能だったのですから。

であるならば、需要の優先順位付けを行なわなければなりません。

当然、優先度が高いのは能登半島地震の復旧、復興です。

能登半島地震に土木・建設の供給能力を振り向けざるを得ない以上、大阪万博の延期・中止はやむを得ないところでしょう。

延期も中止もできないのであれば、せめて既存施設を活用した分散開催を検討すべきです。

この期に及んでもなお「当初予定どおり、大阪万博の2025年度開催に邁進する…」と言うのであれば、「能登半島地震の被災者や被害者などどうでもいい」と言っているに等しい。