日銀が金融緩和策を維持していることに、経団連が強い不満を募らせているらしい。
これまで「経済界は金融政策には口を出さない」という不文律があったようですが、近頃では露骨に不満を募らせ、怒りを顕にしています。
金利差を要因にした円安進行が輸入コストを増大させている一方、労働サイドからは賃上げ要請が強まっているためかと思われます。
まず、円安で輸入品の物価が大きく上がっているのに輸出が冴えない。
円安は製造業など輸出産業にとっては追い風のはずですが、とりわけ大手企業は拠点を世界中に分散させてきたこともあって輸出増のメリットを活かせずにいます。
あのトヨタでさえ、生産の60%は海外ですから。
もう一つ悩ましいのは、賃上げ圧力。
民間シンクタンクの予測によれば、2024年の賃上げ率は3.7〜3.8%となっています。
これらの理由から、経団連は「金融緩和を止めて金利差を縮めてくれぇ〜」と日銀に文句を言っているわけです。
しかしながら、経団連の理解不足を指摘せざるを得ません。
なぜ日銀が金利を上げられないのかと言えば、むろん、未だ日本経済はデフレのなかにあるからです。
確かに円安の影響を受けて輸入物価が上昇していますが、デフレとは貨幣現象の話ではなく「需要」が足りているか否かの話です。
需要が足りていないがために、企業のおカネを借りる力が弱い。
そのようなときに「金利」を上げてしまったら、余計に貸出を抑制してしまうことになります。
ゆえに日銀は金利を上げることができないでいるわけです。
金利の引き上げとは、企業がおカネを借りる際の資金コストを引き上げることを意味します。
逆に、金利を引き上げるのが有効な政策となる時というのは、企業や家計がおカネを借りまくってデマンド型インフレが膨張してバブル化している時です。
円安による輸入物価上昇によって国民の実質賃金が下がり続けている点については、むろん、政府が消費税を廃止するなり、あるいはガソリン価格を抑制しているように輸入元請け業者に補助金を出すなりすればいい。
むろん、それは政府の仕事です。
そもそもデフレを放置してきたのも政府です。
なので、経団連が文句を言うべき相手は日銀でなく政府です。