先週の金曜日(12月22日)、令和6年度予算の政府案が閣議決定されました。
予算案は政府案として来年1月に召集される通常国会に提出され、衆参両院での審議を経て3月末までに成立する予定です。
さて、政府予算については、ここのところ毎年のように予算規模が拡大してきましたので、予算案が示されるたびにメディアらは「過去最高額だぁ〜」と騒ぎ、いかにも放漫財政であるかのごとく喧伝してきました。
ところが、このたび閣議決定された予算案は対前年比で2兆3,000億円も減額になったため、こんどは「社会保障費が増えているぅ〜」とか、「国債発行額が多すぎるぅ〜」とか言って批判しています。
いや、2兆3,000億円も減額していること自体、そもそも「緊縮財政」でしょ。
それに、国債発行額も少なすぎですし。
とりわけ、NHKあたりは「財源の3割以上を国債に頼ってるぅ〜」「国債発行残高は1,105兆円に達するから厳しい財政状況が続くぅ〜」などと必死に財政状況の厳しさを強調しています。
なんどでも言いますが、変動為替相場制を採用し、自国通貨建てで国債を発行する政府の場合、国債発行残高は増え続けることが常識であり普通です。
変動為替相場制を採用し、自国通貨建てで国債を発行できる国は、いわば「主権通貨国」です。
主権通貨国は国債発行を通じて、国民経済に貨幣を供給しています。
新たに就任した林芳正官房長官が「デフレからの完全脱却を目指す…」と言っているように、我が国経済は未だデフレの中にあるわけですが、デフレとは国民経済という大きなシンクのなかの水(貨幣)が不足している状態です。
ゆえに今は、シンク(国民経済)に水(貨幣)を供給することが政府の重要な役割です。
シンクの水が溢れ出すほどに溜まりだしたら、そのときこそデマンド型インフレとなり、デフレからの完全脱却です。
なお、ここで重要なポイントは、政府財政は「支出が先」であり、「税収が後」になることです。
ここがなかなか理解され難い点ですが、政府は支出にあたって税収を必要としていません。
政府による財政支出が先にあって、徴税はその後に行なわれます。(税収が足りないから支出できない、というのは嘘)
因みに、確定申告は年度末。
つまり、税収は政府支出の後なのですから、税収が財源であるはずがない。
しかも、社会福祉、防災インフラの整備、防衛力の強化などなど、これら政府の公共需要さえあれば、中央銀行(日本銀行)がいつでも貸出し(貨幣創造)を行なうことができます。
要するに政府支出の財源とは、支出に使う「貨幣」のことであり、その貨幣は中央銀行が国債(国庫債券)を担保に創造するのです。
逆に、財政健全化とは、シンクの水を減らすことであり、貨幣の破壊と消滅です。
政府が徴税を行なって税収を得ると、貨幣(水)は国民経済(シンク)の中から引き上げられることになります。
因みにもしも、政府、企業、家計、これら全ての経済主体が借金を完済すると、国民経済から貨幣が消滅します。
本来、家計は貯蓄を増やすべき経済主体であり、企業は借金(投資)をして成長すべき経済主体です。
デフレとは、企業に借金(投資)する力がない経済状態なのですから、今は政府こそが借金(国債残高)を増やすほかはないのでございます。
結論としては、令和6年度予算ではデフレを脱却することはできません。