現在の国際情勢において最大の関心事は、イスラエルによるガザへの地上侵攻がいつになるかにあります。
早ければ今週中とも言われています。
イスラエルとしては直ぐにでも侵攻したいところなのでしょうが、おそらくはその条件がなかなか整わないのでしょう。
ハマスは今、約200人もの欧米系外国人を人質にとっていますが、20日には米国国籍の二人の人質を解放しました。
仲介したのはカタール。
カタールはアラブとも欧米とも話をできるチャンネルをもっています。
「ハマスが米国の人質から開放しているのは時間稼ぎに過ぎない…」とイスラエルは批判していますが、ハマスとしては敵対国の人質を優先的に開放することで、ハマスにも欧米との話し合いに応じる姿勢が充分にあることを強調しておきたいのだと思われます。
といって「ハマスが人質を全員開放するまでイスラエルは地上侵攻を行わないのか…」といえば、そうはならないでしょうけど。
イスラエルは平和ボケしている日本などとは違って、やる時はやります。
第一次中東戦争以来、戦うことにより現在の国際的地位を確保してきたのですから無理もありません。
ただ、さすがに各国の首脳がイスラエルを訪問している最中での侵攻はあり得なさそうです。
17日にはドイツのショルツ首相が、18日には米国のバイデン大統領が、19日にはイギリスのスナク首相が訪問していますが、今週中にはフランスのマクロン大統領が訪問する予定になっています。
欧米の首脳が訪問している背景には、次のような理由があります。
EU統合以来のシェンゲン協定によって欧米諸国はどこも移民大国になってしまいました。
むろん、自国内にはイスラム系の住民も少なくない。
そこで、イスラエルを訪問して自制を促すことで「少しでもイスラムに配慮していますよ…」という姿勢をみせておかなければ、国内においてイスラム系のテロが起こりかねない。
要するに欧米首脳のイスラエル訪問は、国内向けのパフォーマンスでもあるわけです。
最も地上侵攻の可能性が高いのは、フランスのマクロン大統領が帰国した直後とも言われています。
さて、イスラエルが地上侵攻に及ぶ際の最大の敵は、「電気」です。
もしもハマスから電気を奪うことができれば、イスラエルの軍事作戦は格段に有利な展開で運ばれることになります。
今回、ハマスが戦果を挙げている武器の一つである無人機、あるいは起爆装置には悉く充電バッテリー(電気)が使われています。
ゆえにイスラエルは一番最初にガザ地区を包囲した際にも電気を遮断しています。
武器だけでなく情報収集の面においても電気は欠かせない。
今や情報面で最も重要なツールは、スマホです。
ハマスの戦闘員たちは、スマホで情報収集し連絡をとりあっています。
むろんガザ地区の民間人にとってもスマホは生命線であると同時に、彼らが撮影する現地映像もまたハマスにとっては重要な情報戦ツールとなっています。
例えば、ガザでの悲惨な状況が市民によって映像化され世界に発信されることで、「起きている悲劇はすべてイスラエルのせいだ」という国際世論形成の一助となり得ます。
現在、ガザ地区の住民の多くは、自動車のバッテリーをかき集めてスマホやタブレットの充電器としていますが、これらがないと、国連等の支援機関がどこで物資の支援を提供しているのか、あるいはどこに逃げればいいのかなどの情報を入手することができません。
なのでハマスとしては、ガザ住民がスマホを充電するに充分な電力を確保する必要があるわけです。
ガザ国境で唯一、通行可能なエジプト検問所では、人道支援目的に食料等を積んだトラックが国境を超えて運ばれていますが、ガソリンや軽油を積んだトラックの入国をイスラエルは認めていません。
なぜなら、ガソリンや軽油は発電機を動かす燃料になるからです。
イスラエルとしては発電機を軍事利用されるのが嫌なのでしょうが、発電機は病院などの施設でも不可欠なものです。
よって、完全にガソリンや軽油を止めることはできません。
といって、時間が経てば経つほどにガザ地区の電力源が充実し、イスラエルとしては不利になっていきます。
加えて、イスラエルでは30万人を超える国民が国家総動員をかけられているため、経済活動が止まっている状態です。
いつまでも経済活動を停止させておくこともできないでしょう。
だとすれば、やはりマクロン仏大統領が帰国した直後あたりの侵攻開始が濃厚となりましょうか。