1991年、ついにソビエト連邦は崩壊し、東西冷戦は終結しました。
冷戦を勝利した米国の大統領クリントンは、おせっかいにもロシアに経済顧問を送り込み「経済改革」を指南した。
「こうやれば、ロシアも立派な資本主義国になれますよ…」と言わんばかりに。
送り込まれたのは、ジェフリー・サックスという経済学者です。
この学者、例によってバリバリの新自由主義者です。
そのジェフリー・サックスの御指南のもと、ロシアで構造改革(Shock therapy)が行われたのですが、その結果はどうなったでしょうか。
残念ながらロシア国民は人類史上、稀にみる経済危機に陥ってしまったのです。
まず、経済規模はソ連時代の約2分の1に縮小し、貧困者(1日あたり600円以下の生活水準)の割合は、2%から50%近くまで増大しました。
また、民営化はオリガルヒと呼ばれる少数新興財閥を億万長者に仕立て上げましたが、政府には貧しい年金生活者に当然支払うべき資金さえありませんでした。
ロシアの国有資源会社は実勢価格の2〜3%の価格で売却されてしまったというのですから、そりゃぁボロ儲けでしょう。
因みに、あいだに入った米国の投資会社、例えばゴールドマンサックスなどは何十兆円という利益を得ています。
一時は、ロシアのインフレ率は2,506%にまで上昇し、生活基本物資を買うことさえままならない状況に陥っています。
パン一切れを手に入れるために大行列ができ、日本から送られた支援物資のカップラーメンもガスが不足していたためお湯を沸かせず食べることができなかったという。
街には危険な密造酒や麻薬が溢れ、それにすがらなければ生きていけない様子が記録されています。
しかも、なんと自殺者はそれまでの2倍に、殺人事件数・暴力事件数の発生率は4倍に急増してしまいます。
まさに生地獄のような有様です。
また、構造改革がもたらした医療崩壊により、ロシア人の平均寿命は、1991年から1994年の3年間で6年も縮みました。
ここまで平均寿命が縮んだのは、世界でも過去半世紀で最悪だったと言われています。
これら全てのことが、ロシアという豊かな天然資源に恵まれた国で起きたのです。
このように言うと、日本人の多くは「ソ連の崩壊という混乱した状況にあったことが原因で、ロシア経済が壊滅してしまったのだから当然ではないか…」と思うかもしれません。
しかしながら、同じくソ連の一員であった国々、例えばベラルーシやポーランド、それこそウクライナではこのようなことは起きていません。
因みに、ベラルーシはロシアのように石油や鉱物などの天然資源が豊富でないため、もしもソ連崩壊が経済危機の原因だとするなら、ロシアよりもベラルーシの方がより深刻な状況に陥っていたはずですが、そうはなりませんでした。
ジェフリー・サックス御指南による構造改革が行われたロシアでだけで起きた出来事なのでございます。
1992年、ロシアの副大統領アレクサンドル・ルツコイは「ロシアで経済的大虐殺が行われている」と告発しています。
ロシア国民は、こうした市場化(Shock therapy)による地獄化を体現したわけですが、そのロシアを立て直したのがプーチン大統領です。
プーチン大統領が米国を信用できないのも宜なるかな。
しかも、その米国は「1インチたりともNATO(北大西洋条約機構)を東方には拡大しない」と約束したにもかかわらず、旧東欧諸国を次々とNATOに加盟させ、ロシアと国境を接するグルジアやウクライナまでをも加盟させようとしたわけですから、プーチンでなくともロシアは立ち上がらざるを得ないでしょう。
よって、プーチンがウクライナを追い詰めているのではなく、米国こそがロシア(プーチン大統領)を追い詰めたのだと言わざるを得ない。
そして更に日本国民は知るべきです。
この悪名高きジェフリー・サックスの御指南を受けて、我が国で新自由主義に基づく構造改革(Shock therapy)を主導した人物こそ、竹中平蔵先生であることを。