平安時代末期、人々の経済活動が停滞し飢えて苦しむ者たちが増えてくると、朝廷は富裕農民に種籾を拠出させ、これを貧しい農民たちに貸し与えました。
種籾を貸し与えられた農民は、それを元手にして農作業に励む。
そしてめでたく秋の収穫時になると、借りた分の種籾を返納したのです。
今で言うところの金融政策ですね。
朝廷という政府の存在が、こうした金融政策(あるいは福祉政策)を可能にしたわけです。
この場合、富裕農民に種籾があるから良かったものの、もしも富裕農民にさえ種籾が無かったとしたら、深刻な大飢饉になっていたことでしょう。
どんな奇跡が起きようとも、種籾というモノは「無」からは生まれないのですから。
ところが現在では、政府は「無」からおカネ(貨幣)を生み出すことができるようになりました。
現に、各国政府は国債を発行することで無から貨幣(財源)を捻出しています。
そして、無から貨幣(財源)を捻出した政府は、財政支出(歳出)を通じて国民経済におカネ(貨幣)を供給しています。
ここで重要なのは、現代経済において流通する貨幣の大半は現金ではなく、預金通貨(銀行預金)であるということです。
政府が企業におカネを支払うにあたっては、現金で決済などせず、銀行預金で決済します。
また、政府に限らず、企業が企業や個人に支払う場合にも、その多くは銀行預金決済です。
ゆえに、貨幣のうち現金通貨が占める割合は2割未満でしかありません。
いずれにしても、現金通貨であれ、預金通貨であれ、政府は「無」からおカネ(貨幣)を創造することが可能な時代なのでございます。
因みに、現金通貨のうち、紙幣(日銀券)を発行するのは中央銀行であり、100円玉などの硬貨を発行するのは政府となります。
すなわち、政府は無から国債を発行することで中央銀行に日銀券を創造させ、硬貨に関しては何の担保もなく財務省造幣局に無から創造させています。
さて、岸田政権(自公政権)は、防衛費や少子化対策費を捻出するために増税を目論んでいますが、無からおカネ(貨幣)を創造できる政府が、どうして国民の懐(財布)からおカネ(貨幣)を回収しなければならないのでしょうか。
むろん、政府が徴税しなければならない理由はいくつかあるのですが、間違いなく言えることは、その理由のなかに「財源確保の手段」などありません。
そのことは、現代貨幣理論(MMT)が既に明らかにしているところです。
なのに、岸田内閣は財源確保の手段として、更なる増税を企てています。
ご承知のとおり、今日からインボイス制度が導入されますので、これにより事実上の消費税増税となりました。
政府は、インボイス制度を導入する理由として「少子化対策や福祉政策などの財源を確保するため…」などと広報していますが、納めた消費税が少子化対策や福祉政策に使われているかどうかなど物理的に確認しようがありません。
それを証明するには、特別会計で行わなければ不可能です。
一般会計で行われている以上、消費税増税分の税収については、ほぼ借金の返済に充てられてると考えていい。
すなわち、貨幣の消滅です。
デフレとコストプッシュ・インフレが併存している経済情勢のなかでの貨幣消滅は、むろん更なる景気悪化をもたらします。