それにつけても、ガソリン価格が高い。
政府からガソリン補助金が出ているにもかかわらず、レギュラーガソリンの店頭価格は長らく1リットルあたり180円程度水準で高止まりしています。
そのくせ、2022年には、ガソリンスタンドが過去最高収益を記録しています。
昨今では「ガソリンの値段が高すぎるぅ〜」と大声を荒らげて、スタンドの定員にヤツアタリをしてくる顧客もいるそうです。
因みに、現在のガソリンスタンドは、その3分の1(37.3%)がセルフスタンドですが、セルフでもやはり高い。
「セルフの分、人件費が浮くだろう…」と考えている人たちが多いようですが、そうでもない。
なぜなら、セルフのガソリンスタンドと言っても、完全なるセルフではありません。
一般的に「セルフのガソリンスタンドには店員がいない…」と思われていますが、客が給油ノズルのレバーを引けばガソリンが出てくるわけではありません。
実はその裏では、設置してあるカメラを見ながらスタッフが「給油許可ボタン」を押していて、それにより客はレバーを引くだけで給油できるようになっています。
ガソリンの取り扱いは『危険物取扱者甲種』または『危険物取扱者乙種4類』の資格が必要であるため、セルフに見せてこうした措置が採られています。
要するに、結局は人手が必要になるために人件費をそれほど抑えられませんし、給油機器の設置にもそれなりの費用がかかっていますので、セルフのガソリンスタンドとはいえ、それほど経費は削減されていません。
さて、問題は、政府がガソリン補助金を出しているのにどうして店頭価格に反映されていないのか、ということです。
ご承知のとおり、政府は、2021年に高騰したガソリン価格を抑えるために、通称『ガソリン補助金』を実施し、原油コストの上昇分を最大5円まで補う方式が採用されました。
上限5円の補助金は、エネオスや出光などの石油元売り会社に給付され、それにより卸価格を抑えてもらい、小売価格が抑制されるというスキームでした。
ところが、ガソリンスタンドの小売にはほとんど影響していません。
例えば、単純に1リットルあたり、5円の補助金が出れば、その分そのまま小売価格を減らすことができると思うのですが、必ずしもそうなってはいません。
むろん、上限価格が決まっていることや、原油の高騰対策に絞られていたことから、少なからず世間では納得感があったのも事実なのですが、2022年3月ごろに補助金の給付方法が変更され、先週の支給額と原油価格の変動分を加える事となり、補助金はさらに増えて上限25円にアップされました。
さらに4月25日には、上限が35円に拡充され、さらなる超過分についても1/2支給となりました。
凄いですね、たった2〜3カ月で5円から35円にまで補助金が増えたのです。
問題は、この補助金の取り決めは、原油価格ではなく、ガソリンスタンドが自分たちの経費の増加分を上乗せして小売価格を決め、経費を含めて小売価格が上がった場合でも補助金に上乗せされる仕組みになっていることです。
つまり、ガソリンスタンドは経費を使えば使うほど国からの補助金が増えて儲かるわけです。
補助の仕組みに欠陥があるのは明らかなのですが、岸田内閣は何もしていません。
そこには、次のような理由が推測されます。
よく言われているように、ガソリン価格のほとんどは税金です。
本体価格にガソリン税や暫定税率分の税金が上乗せされ、そこに更に消費税率10%が掛けられます。
いわゆるダブル(二重)タックス問題です。
要するに、ガソリン価格は4割近くを税金が占めており、そこに補助金をかけて価格を引き下げているわけですが、政府からすると、おカネを貰うところに予算を投入するという実に意味不明な事態になっています。
ここでもやはり、誤った貨幣観に基づく財政収支均衡論が根っこにあるわけです。
なので政府は、凍結しているトリガー条項(ガソリンにかかっている高い税金の一部を免除すること)を発動しようともしません。
これを発動させ、2重課税をやめるだけで、現在でもガソリン価格を150円ぐらいにすることができるはずです。