財政健全化と経済成長

財政健全化と経済成長

繰り返しますが、経済成長とはGDPが増えることです。

GDPとは、日本国内全体の「所得」の合計であり、「支出」の合計であり、「生産」の合計です。

これが、いわゆるGDP三面等価一致の原則(所得=支出=生産)というものです。

GDP統計については、内閣府は基本的に支出の合計で発表しています。

その内訳が冒頭のグラフです。

決算ベースでみたいので、2021年の名目GDP(支出面)で細分化してみました。

ご承知のとおり、一番大きいのは「民間最終消費支出」です。

私たち国民、即ち家計や企業による消費です。

そして次に大きいのが、政府による消費です。

このように言うと「政府=公務員が、なにか余計な消費をしている…」かのように誤解されそうですが、そうではありません。

ここで言う「政府消費」とは、私たち国民が消費している、例えば「国防サービス」「警察サービス」「消防サービス」「医療サービス」「介護サービス」「教育サービス」等々の行政サービスのことです。

消費しているのはあくまでも国民であり、その支払いを政府が肩代わりしているために「政府最終消費支出」と言います。

政府最終消費支出の次に大きいのが「民間設備投資」で、次いで「民間住宅投資」となります。

「公的固定資本形成」というのが、いわゆる公共投資のことです。

厳密には公共投資から、用地買収費用などを差し引いた金額です。

この年は輸出よりも輸入のほうが大きかったために、要するに日本が外国に売った金額よりも、外国から日本が買った金額のほうが大きかったために、純輸出はマイナス(純輸入)となり、その金額分がGDPから控除されます。

さて、政府の緊縮財政というのは、例えば政府自らが「支出を削ります」と言っていることになります。

例えば、「公務員を減らします…」「自衛官を減らします…」「病床を減らします…」「行政サービスを縮小します…」などとやると、上のグラフの政府最終消費支出が着実に減ります。

また、政府(財務省)は、緊縮財政の一環として消費税率を引き上げ続けていますが、これにより今度は「民間最終消費支出」が着実に減ることになります。

社会保険料の増額もまた「消費税増税」と同様の負の効果をもたらします。

要するに、政府が「財政健全化(=緊縮財政)をします…」とやると、必ずGDPは減るわけです。

以上のような理由から、残念ながら現在の日本においては、財政健全化と経済成長は絶対に両立しません。

どうしても財政を健全化したいのであれば(無理にそんなことをする必要はないのだが)、まずは経済成長を実現してからの話です。

もしくは、人工的にバブルを引き起こし、民間債務を超過剰に拡大させれば、たしかに政府のプライマリー・バランス(基礎的財政収支)は黒字になり、財政健全化は達成されます。

しかしながら、そのかわりバブルが弾けたらまた多くの死者を出すことになります。

果たしてそれを社会として許容できるのでしょうか。

弾けないバブルなどあり得ない。