10月からはじまるインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、さらなる増税となります。
インボイス制度の正当性を主張する人たちは、「消費税は預かり税なのだから、それを預かった事業者に免除措置があるのは明らかに益税だ」と言う。
しかしながら何度も言うように、消費税は「預かり税」(間接税)ではありません。
事業者の粗利(利益と課税仕入れ)に課せられた、いわば第二法人税(直接税)です。
よって益税の批判は当たらないし、インボイス制度導入によって免税事業者にとっては明らかな増税であり、免税事業者と取引する事業者にとっても増税です。
増税分が価格に転嫁されれば、むろん消費者にそのしわ寄せがくるので、ますますコストプッシュ・インフレ圧力がかかります。
因みに、この時期になっても未だ、免税事業者の約9割が登録事業者になっていないらしい。
むろん制度への認識不足もあるのでしょうが、あくまでも制度への抵抗から登録に至っていない免税事業者もおられるのでしょう。
繰り返しますが、インボイス制度は増税です。
と同時に、あらゆる増税への布石であると言ってもいい。
既に政府の税制調査会は、サラリーマンの「退職金」の増税や「通勤手当」への課税、あるいは「給与所得控除」にまでメスを入れるとしています。
岸田総理に言わせると、それが「令和時代のあるべき税制」なのだとか…
結局、個人事業主になるのも、サラリーマンでいつづけるのも、共に地獄となる世の中です。
税制調査会の提案を見てみますと、例によって「財務省様」の悲願がそこそこ達成されているように見受けられます。
とりわけ、サラリーマンにとって大きな痛手は給与所得控除の縮小案です。
ご存知のとおり、給与所得控除は無条件で一定の経費を差し引く制度です。
いわば、会社側が従業員一人ひとりのスーツとか靴とかの経費を実費で計算していたら大きな手間になるため、収入に応じて一律に経費の額を定めているわけです。
この給与所得控除の水準は約3割です。
なので財務省から見ると「相当に手厚いじゃねえか…」となるのでしょう。
もしかすると「インボイス制度の導入で“益税事業者!?”などと非難された個人事業主はきっと賛成にまわってくれるだろう」などと、国民の分断を煽りたいのでしょうか。
つまりは、インボイス制度ではサラリーマンに「免税事業者(個人事業主)は益税だぁ〜」と非難させ、今度は個人事業主たちに「サラリーマンは優遇され過ぎているぅ〜」と非難させようとしているかのようです。
考えてみれば、給与所得課税が見直された場合、当然のことながら課税所得が上がりますので「所得税・住民税・健康保険」が上がるわけですから、言い替えればインボイス制度のサラリーマン版です。
さすがに政府税調は「働き方に関わらず受けられる控除を拡大するような具体策を検討する…」としていますが、はたしてどんなものがでてくるか…
むろん、退職金の課税見直しも甘くみてはならない。
軽減措置を減らすというわけですから。
現状、退職金に対する控除額は、勤続20年以下で40万円、それ以上で70万円です。
同じ会社に19年3ヶ月勤務した場合の控除額は800万円(40万円☓20年)ですので、もし退職金が800万円以下の場合は税金がかからないようになっています。
一方、38年間勤めた場合、800万円+70万円☓(38年−20年)ですので控除は2060万円、即ち2000万円なら無税ということです。
これらが実際にどのように見直されるかは、税制調査会の議論によって決められるわけです。
しかしながら、我が国はこの30年間、ほとんど手取りが増えていないデフレ経済(失われた30年)の中にあります。
これ以上、増税して国民から所得を奪ってどうするのか!
詰まるところ、政治家から役人、学者、メディア、有権者、あらゆる人々が貨幣についての正しい理解を有していないことが根本問題です。
正しい貨幣観こそが国民を救い、誤った貨幣観は間違いなく国民を地獄に突き落とします。