福島第1原子力発電所から出る処理水(汚染水ではない)についてですが、海洋放出に必要な条件が週内には整う見通しのようです。
去る7月4日には、IAEA(国際原子力機関)が放出の安全性を認め、今日中には日本政府による安全性の評価作業も完了する予定です。
政府は来月(8月)にも放出する調整に入るために、地元への説明を続けています。
それにつけても、海洋放出される「処理水(厳密にはALPS処理水)」を未だに「汚染水」として喧伝する人たちがいるのは残念です。
ALPS処理水とは、多核種除去設備(ALPS)などを使って「汚染水」からトリチウム以外の放射性物質を規制基準値以下まで取り除いたもので、安全性の面において汚染水とは大きく異なるものです。
因みに、「トリチウム(三重水素)」は水素の仲間ですが、水道水や食べ物、そして私たちの体の中にも存在するものです。
自然界でも生成されるトリチウムは、雨水や水道水、大気中にも含まれ、たしかに放射線を発しはするものの、とても微弱で紙1枚で防げる程度なのだとか。
しかも、今回の海洋放出にあたっては、トリチウムの値を規制基準の1/40(WHO飲料水基準の約1/7)以下にすることになっています。
さらには、より安全性を確保するため、放射性物質の濃度を確認した後に福島第一原発から海洋に放出し、放出前後の状況は国際機関など第三者が確認することになっています。
なお、トリチウムの海洋放出については世界中の数多くの原子力施設で実績があり、福島第一原発においても安全性に関する世界共通の考え方に基づいて実施されるとのことです。
私が言うまでもなく、一日もはやい福島の復興のためには福島第一原発の廃炉が不可欠です。
廃炉作業を進めていくためには敷地内に相応のスペースを確保する必要があるわけですが、今はALPS処理水のタンクによって多くの敷地が占有されています。
であるからこそ、ALPS処理水の処分を行い、タンクを減らしていく必要があるのでございます。
むろん、廃炉を急ぐことによって風評影響を生じさせることがあってはならないので、「復興」と「廃炉」の両立という大原則のもとで処分を進めようとしているわけです。
処理水の海洋放出を巡っては、中国や韓国など海外の一部から懸念が上がっていますが、何度でも言います。
IAEA(国際原子力機関)や米国は安全だと言っています。
そして、処理水の中に含まれるトリチウムの総量は860兆ベクレル相当と推定されています。
ベクレルとは、放射性元素の原子核が変わる回数のことで、860兆ベクレルということは、1秒間に860兆回分元素が変化する反応が起きているということです。
860兆というと一見多いように聞こえますが、例えば日本の体内でも放射性物質であるカリウム40が一人あたり約17mg存在し、その分だけでも4400ベクレルに相当します。
むろん、放射線に全く晒されていない人間など、この世に存在していませんし、過去にも存在していません。
なお、イギリスのセラフィールド再処理施設では、2015年に1540兆ベクレルの処理水を海洋に放出したことがありますが、それに対して中国や韓国がイギリスに抗議をしたことなど一度もありません。
中国や韓国らの主張が「科学」に基づくものではなく、「政治」に基づくものであることがよく解ります。