先週に行われた日銀の金融政策決定会合の結論は、詰まるところ現状維持でした。
短期金利は、マイナス。
長期金利をゼロ%プラスマイナス0.5%程度に抑え、量的にも大規模な金融緩和策を維持するとのことです。
日銀が目標としている物価目標(コアCPI=生鮮食品を除く総合指数)は前年同月比で2.0%ですが、4月のコアCPIは既に同3.4%に達しています。
目標を超えているものの、未だ金融緩和を維持しなければならないのは、むろん今の日本経済がデフレ基調だからです。
確かに一部の物価は上昇していますが、それらはウクライナ情勢など国際的な原材料価格の高騰を背景にした供給制約に伴うコストプッシュ・インフレであり、景気(需要)回復に伴う物価上昇(デマンドプル・インフレ)ではありません。
ゆえに植田日銀総裁は「粘り強く金融緩和を継続していく…」という意志を強調しています。
政府による財政支出の拡大(需要創出)によりデフレが払拭され、過剰なデマンドプル・インフレに達するまで日銀の金融緩和は継続されるものと思われます。
例によってメディアは「行き詰まる日銀…」みたいに煽っていますが、政策的に間違っているのは日銀ではなく、PB黒字化(収支の縮小均衡)にこだわって緊縮財政を続けている政府です。
政府のなかでも、緊縮財政を推進している総本山は何といっても財務省です。
といっても、なにも彼らは悪意を持って緊縮財政を推進しているわけではありません。
唯単に「経済」や「貨幣」について、正しい知識を持ち合わせていないだけです。
むろん、正しい知識を得てもなお、それを無視して緊縮財政を行い続けているのであれば強烈な悪意です。
おそらくは、後者の可能性のほうが高い。
国民経済は「誰かの支出が、誰かの所得になる」というかたちで横に繋がっています。
少なくとも、生産者と購入者の2名が存在しなければ、経済は成立しないのでございます。
不思議なことに、我が国には「政府は無駄遣いするな…」と批判する人たちが跡を絶ちませんが、そもそも「無駄」の定義が不明な上に、政府が支出を減らすと着実に誰かの所得が減ることになり、GDPは成長しません。
いつも言うように、経済成長とは「GDPが増えること」です。
GDPが増えることとは、同時に実体経済において国民の所得が拡大していくことをも意味しています。
しかしながら、前述のとおり現在の日本経済は未だデフレの中にあります。
デフレとは、企業や家計が実体経済のなかでおカネを使わないことによって生じる需要不足経済のことです。
ここで言う「需要」こそ、まさに「GDP(所得)」です。
みんなの支出(需要) = みんなの所得(GDP)
なお、ここで言う「みんな」には、政府も入ります。
デフレ期に採算度外視でおカネを使うことができる経済主体は「政府」だけです。
それを理解できないエリートたちが我が国の政治権力の中枢に居座りつづけ、日本国民の貧困化、及び日本国の発展途上国化を進めています。