台湾の世界的半導体メーカーであるTSMCの工場が熊本に進出するのは周知のとおりです。
いよいよ来年、2024年4月から稼働がはじまります。
それに伴い、今年の夏には台湾から駐在員やその家族、約600人が入国します。
やがてはTSMC向けだけで1000戸の住宅が必要となると見込まれていることから、周辺では台湾の人たちが土地を買い、戸建てやマンションの建設が進んでいるという。
こうしたTSMCの流れに乗り、他の台湾企業も熊本に進出することになるらしいから、さらに土地が買われていく可能性が大です。
熊本進出を検討している台湾の企業は、現段階で10社以上あることがわかっています。
結果、地元の不動産業者にオファーが相次いでおり、熊本の土地相場が既に2倍以上に跳ね上がっているという。
しかも、土地が売れるスピードがハンパじゃないらしい。
なかには、見てから30分くらいで数千万の土地を即決購入したケースもあったようですので、どんどん値段を吊り上げても飛ぶように売れてしまう様子がよくわかります。
ただ、買われているのは普通の土地だけではない。
農業用地も買われているようです。
例えば「20ヘクタール規模の畑を工業用地にしたい…」という話も出ているようで、ただでさえ食料自給力が脆弱な我が国にとっては食料安全保障上の観点からも大問題です。
因みに20ヘクタールといえば、東京ドーム4個分の広さです。
驚いたことに、これに反対する声はほとんど上がっていないという。
ご承知のとおり、今、日本の農家は儲からない。
例えば、コメ農家の93%が赤字です。
加えて後継者不足という問題も抱えているわけで、そんな中、土地を相場以上の価格で買ってくれるという話が舞い込んでくれば、「今が売り時だ…」と考え、反対する気にならないのも宜なるかな。
しかしながら、熊本といえば「野菜王国」として有名で、日本一の生産量(全国シェア5分の1)を誇るスイカがあり、肥後のでこなす、小国町の小国だいこんのように美味しい野菜を多く生産しています。
これを守らずしてどうする!
いったい熊本市や熊本県は何をしているのか。
こうした深刻な問題に対処するどころか、なんと熊本県は『半導体拠点推進調整会議』なる会議体を設置し、農地に進出企業や住宅を集約・誘導することを促しているという。
絶句するほかない。
また、熊本市は「優良農地は守りながら、農地が虫食い状態にならないように集約していく…」として、農家が土地を売ることについて推進しているという。
いつも言うように、人が生きるうえにおいて、「食」に関することもまた国防(食料安全保障)なのです。
本当に国を想うのであれば、太陽光パネルを推進したり、環境ビジネスに補助金を出したりする前に、まずは我が国の食料自給率を引き下げるような施策には声を大にして異を唱えなければならない。
熊本の食の危機は、むろん日本の食の危機です。