人口減を理由に行政サービスを縮小する愚

人口減を理由に行政サービスを縮小する愚

昨日、川崎市議会では総務委員会が開催されました。

委員会では、「公共ホールのあり方(案)」について所管局である総務企画局から報告がありました。

報告の内容を簡潔に述べると、要するに「今後、川崎市は人口が減るから市が保有する公共ホールなどの公共施設を統合し効率化していきます」というものです。

当局のロジックは次のとおりです。

「川崎市が保有する公共施設は10年後に約75%が築30年以上に達する → 施設機能の低下や修繕費用の増大など老朽化に伴う問題が懸念される → 維持管理費や事業運営費の費用が増える → 加えて市の人口が2030年頃に約160.5万人をピークにし、その後は減少(2060年頃に148.7万人)する → 人口減少に伴い市民一人あたりの平米数(公共施設の床面積÷人口)が増加する → 要するに市民一人あたりの費用負担が増大する → だから施設の複合化や多目的化等の手法を用いて統合する」

さて、ここで総務企画局が言う「統合」とは、要するに「(人口が減るんだから)維持する公共施設を縮小していきます」ということです。

この報告を聴いた総務委員(総務委員会に所属する川崎市議会議員)の多くは、なんとなく納得していたご様子でしたが、むろん私は強く異を唱えました。

因みに、それに直ぐに同調してくれたのは、例によって共産党の議員のかたです。

よく考えてみてほしい。

「人口が減るから、このまま施設を維持すると一人あたりの税負担(維持負担)が増える」という当局の前提条件がまちがっています。

税収は人口に相関するものではなく、経済規模(市内GDP)に相関するものだからです。

「人口規模で経済規模が決まる…」という考え方は、産業革命以前の考え方です。

例え人口(生産年齢人口比率)が減っても、着実に経済(市内GDP)が成長していけば税収は増えていきますので、市民一人あたりの維持負担が増えるというロジックは成立しません。

現に、歴史的にも人口減少社会でも経済成長した事例はあります。

それを指摘したら、当局は次のように答弁しました。

「最悪の経済情勢を想定して計画しました…」

呆れるほかない。

まず、この段階で当局による「人口減だから税負担が増える…」というロジックは崩壊しています。

百歩譲っても「最悪の経済情勢を想定した計画」であるのなら、もし経済情勢が最悪でなかった場合、多目的化等の施設統合は利用する市民にとっては行政サービスの縮小になるではないか。

それとも、川崎市長は川崎市の経済を成長させる気がない、ということか。

しかも当局は「2060年の川崎市の人口が148.7万人にまで減る」と言うけれど、148.7万人というのは本市の平成28年の水準です。

むろん、平成28年に比べて2060年の生産年齢人口比率は低下するでしょうが、生産性向上による経済成長効果で相殺可能なレベルです。

川崎市のような首都圏に位置する都市の場合、生産年齢人口比率の低下スピードは地方都市よりも鈍化する可能性が高い。

それに、当局は「2030年までは最大で160.5万人にまで人口が増える」と言っています。

当局が言うように人口規模で税収が決まるのであれば、しばらく税収は増えるはずだ。

その増えた税収により、改修なり、改築なり、建て替えなりをすればいい。

因みに共産党さんが指摘されたとおり、現在の人口水準を下回るのは30年後です。

にもかかわらず、施設の複合化や多目的化などの施設統合は先行して行われようとしています。

施設を利用する人たちならご理解頂けると思いますが、多目的施設はあらゆる催しにとって使い勝手の悪い施設となります。

多目的ホールは無目的ホールと同義語なのでございます。

結局、経済を理解していない人たちが行政を運営すると、このような馬鹿げた前提の上に、筋違いな計画を平然と作りあげてしまうのです。

彼ら彼女らは、「人口が減る…」というテンプレ・ワードを使いさえすれば、行政にとって面倒な事業を縮小できると思い込んでいるかのようです。