IMF(国際通貨基金)が世界経済の最新見通しを発表しました。
今年の世界経済の成長率見通しは2.8%(0.1ポイント下方修正)で、2022年の3.4%成長に比べて鈍化すると見込んでいます。
因みにIMFは「(この先は)霧の中を足元が不安定な小径をすすむようだ」とし、先行きの不透明さを強調しています。
不透明さの最大要因は、G7をはじめとする先進国の成長率の低迷です。
上記の表のとおりの低迷ぶりで、先進国全体で前年の半分程度の成長しかできないとしています。
先進国の失業率も、2022年から2024年までの3年間の平均で0.5ポイント悪化するとされています。
とりわけユーロ圏は、ロシアのウクライナ侵攻の影響による景気の落ち込みが大きいようです。
加えて根強い物価高、それを抑えるために金利を急ピッチで上げている米国等の金融政策の影響により、先進国の9割が減速するとしています。
上の表のとおり、日本だけが前年に比べて上昇するとされていますが、そもそも日本はデフレ経済で端っから成長していないだけです。
これほど低い成長率なのに、設備投資が更に弱まると見込まれ、今年1月時点の予想から0.5ポイント引き下げられています。
日本経済の慢性的デフレ状態は、長期間にわたって世界経済の成長の妨げになっていると言っていい。
一方、IMFは景気が更に悪化するシナリオについても言及しています。
欧米では金融機関の経営に対する不安が高まっているようで、現に米国では地方銀行が相次いで破綻していますし、欧州の大手金融機関においても救済合併される事態が起きています。
こうした信用不安がさらに広がった場合、今年の成長率は2%を割る可能性すらあるとしています。
世界経済の成長率が2%を割ったのは、今世紀に入ってからはリーマンショック直後の2009年、そして新型コロナ危機がはじまった2020年の2回のみです。
IMFは2008年のリーマンショックのときと比べれば各国の銀行の体力ははるかにしっかりしているため、「ただちに金融危機を引き起こすような危険性は低い…」としていますが、物価高騰を抑えようと各国が行なってきた金融引き締めが、明らかに景気悪化や金融業界の信用収縮をもたらしていますので、そうした負の影響がどこまで波及するのか今年はまさに正念場となりましょう。
グローバリゼーションが終焉した以上、今後は世界的にインフレ基調となることが予測されます。
ここで重要なのは、インフレにはデマンドプル型とコストプッシュ型の2種類があることを認識しなければならないことです。
各国政府がそれを理解できない場合、世界経済は更に混迷を深めていくことになります。