私たちのお財布に入っている10円玉や100円玉などの硬貨の形が丸いのは、四角形に比べて使用するときに摩擦が少なく便利であり、大量生産するうえでも都合がいいからだとされています。
なお、5円玉、50円玉の真ん中に穴が空いているのは、他の額面の硬貨との識別を容易にするためだという。
因みに、硬貨は年号のある方が「裏」で、その反対側が「表」として扱われていますが、表裏を定める法的根拠はありません。
まぁ、どっちが表で、どっちが裏でもいい。
ただ、1円玉、5円玉、10円玉、50円玉、100円玉、500円玉、はそれぞれ「補助通貨」として法定されており、お札などの日銀券とは一線を画す。
千円札、5千円札、1万円札などのお札(日銀券)の発行者はその名のとおり日本銀行(中央銀行)ですが、補助通貨(硬貨)の発行者は日本政府です。
さて、日本政府は21年ぶりに硬貨を刷新します。
刷新されるのは500円硬貨で材質はニッケル黄銅に白銅などを加えた2色3層構造であるらしく、新500円玉は11月から流通がはじまる予定です。
現在の500円玉の製造コストは約50円ですので、おそらく新500円玉もその程度でしょう。
つまり政府が500円玉を製造すると、コストを引いた450円分がそのまま政府の純資産になります。
これをシニョリッジ(通貨発行益)といいます。
今年度(2021年度)は、とりあえず約2億枚が発行されますので…
450円×2億枚=900億円
…即ち、政府は900億円の純資産を増やすことことなります。
もちろん、政府は純資産を増やすために、あるいは財政収入を増やすために新しい500円玉をつくるわけではありません。
麻生財務相が言うとおり「偽造防止技術が向上し、貨幣の信頼性が高められている」ことから、政府は定期的にお札や硬貨を刷新しています。
当初、新500円玉の発行は今年度前半の予定だったのですが、新型コロナウイルス禍の影響により自販機やATMなどの改修が遅れていることから延期になりました。
そこで問題ですが、今回の政府による新500円玉の製造によって、日本のインフレ率は何%上昇するでしょうか?
答えは、ゼロ%です。
新500円玉が製造されても、たんに現在の500円玉と交換されていくだけですので硬貨の流通量が増えるわけではありません。
例えば、政府が新たに発行した2億枚の500円玉(1000億円)で、国内で生産されたモノやサービス(公共事業でも自動車でも家電でもお弁当でも何でもいい)を購入したとすれば、そのときはじめてインフレ率に影響します。
ただ、デフレが深刻化している現在の日本経済では、たったの1000億円程度の政府支出では焼け石に水でインフレ率はほとんど上昇しないでしょう。
仮に政府が「100兆円玉」でも新造して使ってくれれば、それでようやくインフレ率がじわりと上昇するかもしれません。
何が言いたいのかと言うと、詰まるところおカネなんていうものはこの程度の話だということです。
即ちインフレ制約が許す限りにおいて、政府は無から貨幣(お札や硬貨)を発行するということができる機関なのでございます。
因みに、政府が100兆円玉などの硬貨ではなく、国債を発行するとことで貨幣供給しているのは、やがて景気が過熱化しインフレ率が過度に上昇しはじめたとき、政府は国債を回収することで市場から貨幣を吸い上げなければならないからです。