厚生労働省が行っている『毎月勤労統計調査』は、働く人が労働の対価として受け取る賃金の動きを調査するものです。
同省は毎月、全国の企業に対し、支給した給与や出勤日数、労働時間、労働者数等々を聞いて集計しています。
いわば、働く人々の生活の豊かさや物価動向を示す重要な統計です。
さて、『毎月勤労統計調査』では、働く人1人あたりの月給がベースとなっていますが、米国の雇用統計は1人あたりではなく時間あたりの賃金を指標にしています。
上のグラフをご覧のとおり、米国の名目賃金はこの10年間で4割増であるのに対し、我が国のそれは1割増にも充たない。
日本経済が、いかにデフレの中にあるのかが解ります。
ときおり、巷には「失業率が低下して働く人たちが増えたのだから、一人あたりの賃金が下落しても当然だ…」と言うお〇〇さんがおられますが、我が国では実質賃金(物価変動の影響を除いた賃金)も下がり続けています。
実質賃金は労働者数に関係なく、一人あたりの生産性で決定するのでございます。
要するに我が国の場合、デフレにより名目賃金の伸び率が低いことに加え、実質賃金も下がり続けているのでございます。
因みに、上のグラフは時間あたりの名目賃金で比較しておりますが、これを一人あたりの実質賃金で比較すると、日米の差はさらに開きます。
なにしろ、我が国の実質賃金は下がりに下がり続けているのですから。
厚労省が7日に発表した1月の毎月勤労統計調査によりますと、1人あたりの実質賃金は、前年同月比で4.1%も減りました。
この下げ幅は2014年4月の消費税率引き上げ(5%→8%)直後、即ち2014年5月以来、8年8ヶ月ぶりの大きさです。
コストプッシュ・インフレで物価が上昇しているにもかかわらず、賃金が上昇していない証拠です。
なお、そこには、新自由主義に基づく「構造改革」によって増えてしまった「非正規雇用」の問題もあります。
我が国の非正規雇用は2022年に2101万人と3年ぶりに前年を上回りました。
2012年以降は雇用者の約4割が非正規雇用です。
以前のブログでも申し上げましたとおり、正規雇用者と非正規雇用者の男性婚姻率をみますと、前者が約60%であるのに対し、後者が約20%となっています。
ここに少子化の原因があります。
即ち、少子化の直接的な要因は、低所得と雇用不安にともなう若者の「非婚化」にあります。
現に、有配偶女性の出生率は増えており、結婚できるほどの経済力のある家庭では子どもを生んでいるわけです。
今回の統一地方選挙に際しても、多くの候補者が少子化対策として「子育て支援の充実」をお訴えになられるのでしょうが、子育て支援策は福祉政策ではあるものの、少子化対策にはならない。
むろん、子育て支援策は大いにやったらいい。
一方、それとは別途に少子化対策が必要です。
少子化の最大の原因が「非婚化」にある以上、非婚化の要因の一つとなっている低所得と雇用不安を解消しなければなりません。
一に実質賃金を引き上げるための経済(財政)政策が必要ですし、二に非正規雇用を正規雇用に変えていくための逆構造改革が必要です。