埋まらぬデフレ・ギャップ

埋まらぬデフレ・ギャップ

内閣府によると、2022年の第4四半期(10〜12月)の実質GDPは年率換算で546.7兆円とのことでした。

同じく内閣府はこの時期のGDPギャップ(デフレギャップ)を-1.9%としていることから、日本経済の潜在GDPを557.3兆円程度(約10兆円の需要不足)とみているようです。

ご承知のとおり、潜在GDPは、小泉内閣時代にその定義が変更されています。

変更したのは、小泉内閣の閣僚としてネオリベラリズム(新自由主義)による構造改革の旗振り役を勤めた竹中大臣です。

それまでは「最大概念」の潜在GDPとしていましたが、どうしてもできるだけデフレキャップを小さく見せたかったらしく「平均概念」の潜在GDPに変更してしまいました。

例えば、100メートルを9.5秒で走る実力をもっている陸上選手が、「あなたの過去平均は100メートル11秒だから、五輪には出場できません」と言われているに等しい。

もしも最大概念の潜在GDPによって現在の日本経済のデフレギャップを計算したら、少なくとも20兆円以上のデフレギャップがあるものと推察します。

ひょっとすると、25〜30兆円のデフレギャップがあるのかもしれません。

いずれにしても、少なく見せるための「平均概念」により計算されているとしても、グラフをご覧のとおりGDPギャップがマイナス(デフレ)であることは疑う余地がありません。

コストプッシュ・インフレで消費者物価が上昇していることから「日本経済がデフレ…」と言われても、なかなかピンと来ない人たちが大勢おられるものと存じますが、日本経済は間違いなくデフレです。

一方、日本政府は、食料品やエネルギーなど輸入価格の影響を受けてしまう消費者物価指数をつかって、日本のインフレ率を少しでも高めに見せようと必死です。

なぜ消費者物価を高めに見せようとしているのでしょうか?

むろんそれは、少しでも政府歳出を減らしたいからです。

即ち、「国民の皆さん、これ以上、財政支出を拡大すると更に物価が上がってしまいますよ…」と脅しているわけです。

しかしながら、コストプッシュ・インフレとデフレが混在しているからこそ、的確な措置として政府支出の拡大が必要なのでございます。

食料やエネルギーなど輸入価格の上昇に影響されている(コストプッシュ・インフレに影響されている)分野に対する財政措置、そしてデフレギャップが深刻な国内需要を埋めるための財政措置の二つが求められています。

因みに、コストプッシュ・インフレに対しても、デフレに対しても日銀にできることは何もありません。

ただただ、政府の歳出拡大が求められます。

財源は、むろん増税でなく新たな通貨発行(国債発行)でいい。