よく、ご高齢の市民のかたから「もっと市バスの本数を増やしてほしい…」という陳情を頂きます。
私の住む川崎市北部は、全国でも最も「高齢化スピード」の早い地域ですので、市バスなどの公共交通機関を充実させねばならぬ地域です。
なのに…
市バスの本数は増えるどころか、過日の時刻表改定に伴い市バスの本数は減らされてしまいました。
理由は、例によって「採算性」です。
いつも言うように、採算に合わないからこそ行政が政治路線として維持すべきで、もしも採算的に儲かる路線であるなら黙っていても民間のバス会社が運行します。
採算が合わない理由は様々ありますが、その一つに乗車率の低さがあります。
川崎市ほどの人口がありながら乗車率が低いのは、やはり利便性の問題かと思われます。
前述のとおり本数が少ないこともあるでしょうし、渋滞が多くバスが時間どおりに来ない、あるいは停車駅の数も系統数も少ない等々の理由です。
これらの問題を解決するには、例えば道路整備による交通流の円滑化や回遊性の確保が必要でしょうし、多くのバスの乗入れを空間的に可能にするため駅前広場などの整備が必要です。
要するに「インフラ」の充実が必要で、ハード(インフラ)の不足をソフトでカバーするには限界があります。
ところが、こうしたインフラ整備の必要性や重要性については、あまり理解が深まらないのが実に残念なところです。
さて、道路、鉄道、港湾、空港、あるいはライフライン(電気、水道、ガスなど)のことを「インフラ」と言いますが、インフラとはインフラストラクチャーの略で「下部構造」を意味します。
つまり、私たち国民生活・国民経済を下から支えるのがインフラです。
ゆえに、下部構造たるインフラが脆弱であれば、その上部の国民生活・国民経済が停滞し衰微していくのは必然です。
かつては経済大国などと呼ばれていた日本ですが、今や明らかに経済小国に成り果てています。
もはや「先進国」とすら言い難い。
世界第2位だった一人当たりGDPは今となっては香港やマカオ、アラブ首長国連邦よりも低くなっており、韓国にも抜かれそうです。
停滞を招いたのは1997年以降のデフレ経済ですが、その凋落を加速させた最大の原因は、経済の下部構造であるインフラの貧弱さにあったと言っていい。
もしも充分かつ適切なインフラへの投資が行われていたのなら、今日のような事態に陥っていなかったはずです。
なにぶん、インフラ投資は経済成長に直結しますので。
しかしながら我が国は、充分なインフラ投資どころか、むしろインフラへの投資額を縮小し続けたのでございます。
例えば、高速道路。
上のグラフをご覧のとおり、高速道路車線数の国際比較をみますと、我が国の高速道路整備の遅れが顕著です。
道路は、その整備水準が高い国ほど経済成長率は高くなり、一方、道路網が貧弱だと経済成長率は低くなります。
即ち、道路インフラの整備格差は、成長率格差に直結するのでございます。
なお、各国のGDP成長率と道路の整備水準(自動車1台あたりの道路総延長)との関係をみても、我が国の自動車1台あたりの道路量は西側先進諸国の中で最も低い水準であることも付しておきます。
日本経済低迷の主要因の一つが、道路インフラの脆弱さにあるのは紛れもありません。
貧弱な道路ネットワークしか整備されていない日本が、韓国に抜かれてしまうのも当然です。