厚生労働省は、新型コロナウイルス患者向けの病床を確保した医療機関に支払う「病床確保料」を半減する方針とのことです。
5月8日に新型コロナの感染症法上の分類が「5類」に変更される予定ですが、そこから適用して9月末まで続け、その後は感染状況に応じて判断するとしています。
病床確保料については、交付額が2年間で3兆円以上にのぼったことから、「医療よりもおカネのほうが大事だぁ〜」という、いわゆる緊縮財政派(収支の縮小均衡派)は金額の大きさを問題視していますが、そんなものはどうでもいい。
それよりも、今年1月に会計検査院から公表された内容に驚かされました。
医療機関のなかには、病床確保料として補助金を受け取りながら、実際には稼働できる状況にはなかったケースや、病床確保に伴う機会損失を大きく上回る補助金を受け取っていた医療機関もあったとのことです。
また神奈川県では、県内76の医療機関に対して、新型コロナ患者のために確保した病床に対する補助金がおよそ88億円過大に交付されていた可能性があることもわかっています。
こうしたこともあって厚労省は、制度のあり方を問題視したのだと思います。
むろん、病床確保料を見直しつつ、できるだけはやく医療体制を平時に近づけたいのでしょう。
さて、病床問題について私が問題視したいのは、本来は地域の公共財であるべき「病床」が、わが国では事実上、病院固有の財産とみなされている点です。
例えば川崎市内には、病床稼働率が常にフル稼働の療養病院から、4割ちかくが未稼働の急性期の病院まで様々あるのですが、前述のとおり、空き病床がありながら、多額の補助金がなければコロナ患者の受け入れに消極的な病院さえあったわけです。
また、その地域にお住まいの患者さんが、その地域の医療圏に属する病院に入院できる割合のことを「自己完結率」と言いますが、多摩区を含む川崎市北部医療圏の自己完結率(療養病床入院)は、なんと42.89%です。
要するに、療養病床を必要とする患者さんの半分以上は、よその医療圏に回されてしまうわけです。
因みに川崎市南部の自己完結率は、45.61%です。
とりわけ川崎市北部は全国でも最も高齢化スピードの早い地域です。
加えて、今後益々もってリスクが高まる自然災害や、新興感染症などの有事にも備えなければなりません。
よって本市の医療圏には、医療提供体制の早急なる強化構築が求められています。
そこで私は、病床配置や配分を差配する決定を、利害関係者である医療関係者が集まった「審議会等」での審議に丸投げすることなく、国や地方自治体が直接行うことを提唱しています。
因みにこれは、法的な最終決定権者である都道府県知事の権限内で可能です。
例えば、政令指定都市にその医療圏の病床を差配させることを認め、それを県知事が追認すればいいだけですので。
しかしながら、現在の神奈川県知事は、そうした権限を行使しようとせず、前述した地元の医療利害関係者らで構成する「川崎地域地域医療構想調整会議」という機関にそれを委ねています。
これは実に困ったことで、川崎市における医療提供体制の向上にとっては大いなる弊害です。
その地域で競合するコンビニの店長たちが、新規コンビニ店の出店の是非について論じるようなものです。