私の自宅近くに、川崎市上下水道局が所有している「さく井」があります。
残念ながら、この貴重な水源の一つであるさく井を撤去するための工事が来週21日からはじまります。
市外の皆様にしてみれば「大切な水源の一つをどうして撤去するの?」と思われるかもしれませんが、これも愚かなるネオリベ行政による「選択と集中」の結果です。
これまで川崎市には、生田浄水場、潮見台浄水場、長沢浄水場の3つの浄水場があったのですが、「選択と集中」の一環として浄水機能を長沢浄水に集約し、潮見台浄水場と生田浄水場(工場用水を除く)を廃止することになりました。
せっかく日量約100万トンの給水能力を誇っていた本市の給水能力は、この「選択と集中」によって日量約75万トンにまでダウンサイジングされることになりました。
今後、世界は水をめぐって戦争が起きるのではないかとさえ言われているなか、こうしたダウンサイジングを行ったことは実に残念です。
とりわけ、廃止された生田浄水場は周辺(私の住む中野島、あるいは菅)の地下水を複数箇所(22ヶ所)のさく井から取水していました。
ゆえに中野島や菅に住む人たちはこれまで、地元の地下水を水源に飲み水等の生活用水として使用していたわけです。
今回、撤去工事が行われるさく井はその一つです。
このさく井を含め9ヶ所のさく井が撤去されることになります。
せっかくの自己水源を行政自らの手で撤去するのですから理解に苦しみます。
詰まるところ、家計簿適な財政感覚で行政運営が考えられているために、このような安易なダウンサイジングが「改革」の名のもとに断行されてしまうわけです。
何度でも言います。
行財政は、通貨発行権や徴税権を持たない「家計簿」とは違う!
一例を挙げます。
2005年8月末、米国の南東部に巨大ハリケーンが襲いかかりました。
いわゆる、ハリケーン「カトリーナ」です。
このとき、ハリケーンによって製油所の一つが機能不全に陥ってしまったがために、米国中のガソリンが高騰するなどして混乱を深めました。
なぜ、たった一ヶ所の製油所が稼働しなくなっただけで、米国中のガソリンが高騰したのでしょうか。
当時、米国における製油所の稼働率は95%近くで、即ちほぼフル稼働だったからです。
ほぼフル稼働だと、一ヶ所やられただけで全米がガソリン不足になってしますわけです。
要するに、水や食料や電気などのライフライン、あるいは石油をはじめとしたエネルギー資源については常に供給体制に余力が必要なのです。
2011年3月の東日本大震災のときもそうでした。
あのとき、私の住んでいる地域にあるコンビニやスーパーの棚から、一斉にペットボトルの水や電池が消えたのを強烈に覚えています。
いざっ、という時、どんなに行政におカネがあったところで、飲む「水」、口にする「食料」、暖をとる「火」、動力としての「石油」や「電気」、いまどうなっているのかという「情報」が現場になければ人間は生きていくことができません。
そこで、現在の川崎市の財政事情をみますと、川崎市は政令指定都市のなかで財政力指数がナンバーワンです。
しかも毎年、市債償還額が市債発行額を上回るようにして緊縮予算を組んでいますので着実に負債残高を減らし続けています。
昨年、コロナ対策で多少の出費をしたものの、市債を発行する際の利回りは低金利で推移しています。
因みに行政部門の赤字圧縮は、民間部門(企業、家計)の黒字圧縮を意味しています。
要するに行政が黒字を追求すればするほど民間部門は赤字化することとなり、例えば挙げ句の果てに次にようなことなります。
川崎市を含む首都圏に直下型巨大地震が発生した → 首都圏の浄水施設の約半分が失われた → 川崎市のほか近隣自治体でも水や食料の不足が発生している → 川崎市民の飲み水がない → 「でも、川崎市の財政は黒字です!」