政治とは集団行動の社会学である

政治とは集団行動の社会学である

東北大、東京大、京都大の研究チームが、南海トラフ沿いで巨大地震の発生した後、1週間以内に同規模の後発地震が起きる確率は2.1~77%と、平時の99~3600倍に高まるという研究結果を英科学誌に発表しました。

世界の他地域と比較しても、わが国の場合は巨大地震が連続で発生する確率が高いという。

研究チームは、過去の事例が少ないため、後発地震の発生確率は誤差の範囲が大きく「予測には不確実性が伴う」としていますが、ご承知のとおり、東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形、即ちトラフ沿いで起きる南海トラフ巨大地震はマグニチュード8~9級が30年以内に70~80%の確率で起きるとされています。

言うまでもなく、わが国は有史以来(むろん有史以前から…)、常に自然災害大国であり、と同時に「津波大国」でもありました。

自宅の建物の揺れは、耐震強化など個人の対策でなんとか持ちこたえることができても、水平線の向こうから押し寄せる、高さ数十メートルの津波に、個人の力のみで立ち向かうことは絶対に不可能です。

津波という自然災害の脅威に対し、なす術もなく蹲っているのでは、私たち日本国民は生き延びることはできません。

個人で立ち向かえない脅威に対し、共同体として対応していくことが安全保障のポイントです。

例えば、北朝鮮から飛来してくるミサイルに対して個人ではどうにも立ち向かえないからこそ、国家という共同体が迎撃してくれるわけです。(実際、できるかどうか疑わしいですが…)

当然のことながら「安全保障」とは防衛だけの話ではなく、災害安保、食料安保、エネルギー安保などなど、安全保障は多岐の分野に及びます。

その点、スイス政府が刊行している『民間防衛………あらゆる危機から身を守る』が参考になります。

安全保障を確立するために「全面戦争」や「核兵器」に備えると同時に、一般市民に「被災者の救援」「消火活動」「救助活動」等の知識を保有することを求めています。

要するに、外国との戦争であれ、大規模自然災害であれ、あるいはエネルギーの途絶や食料不足においても、さらには医療崩壊や犯罪多発でも、国民の安全な生活が脅かされるという意味では同じなわけで、それらの脅威に対し、「個人ではなく、集団の力で対応しよう」ということです。

ただ、脅威というものは常に不確実なものです。

不確実であるからこそ、国民の集合体である国家(共同体)、即ち集団行動で立ち向かっていくほかありません。

あらためて、政治とは集団行動の社会学であることを痛感します。