自民・公明の政府与党が、敵の弾道ミサイル攻撃などに対処するために発射基地などをたたく「反撃能力」の保有について合意したらしい。
これまで政府は政策判断として「保有しない…」としてきましたので、安全保障政策の一つの転換点となります。
とはいえ、敵ミサイル発射機の多くは移動式になっていますので、その発射機を破壊すること自体は困難です。
しかしながら、その指揮系統にあるアンテナ・電源・指揮所など、地上固定施設に対して反撃できるミサイル類を保有することは、むろん有効な防止手段になります。
なお、ミサイル・ディフェンスは基本的に「待ちうち兵器」であり、発射地点から距離の短い日本には不利な兵器です。
パトリオットのような短距離ミサイルを要点に絞って配置する分には有効ですが、日本全域をカバーすることはできません。
なので、国はもちろん、各地方自治体や民間(家計や企業)、あるいは日米両軍施設においてもシェルターの増設を急ぐべきです。
さて、今月内に『中期防衛力整備計画』が見直され、来年度以降の5年間で40兆円を超える防衛予算が確保されることになりましたが、問題はその増加予算で何を買い、何をするのかです。
防衛省内には、次の2案があるらしい。
A:厳しい防衛環境に適合した統連合作戦計画を立て、それに必要な編成装備を準備する
B:先の大戦の反省から、情報・兵站分野の厚みを増やす
むろん私はB案に同意します。
我が国に差し迫る「脅威」が、北朝鮮・中国・ロシアと増加し、その侵攻態様も複雑となっています。
それに加えて、米国の対応も極めて不安定なので、作戦計画を一つにしぼることは難しい。
よって、A案はなし。
B案の情報のうち、近年のその脅威が増している「サイバー作戦能力」の強化は重要ですが、その背景となる諜報活動そのものに人と資金を集中することが求められます。
兵站については弾薬備蓄・補給整備能力の向上をはかって、小規模長期作戦に備えなければならないと思います。
一方、絶対にやってはならないことは、海・空戦力を増強し陸戦力を削減することです。
現在のような「国家間決戦」なき時代にあり得る武力戦は、①国内戦、②国境紛争、③集団安全保障での武力制裁への参加、の三種に限定されます。
これらの武力戦における陸戦力の必要性は言うに及ばず、むしろ海・空戦力の方が無人機の利用等により省力化の余地を持つのではないでしょうか。
とりわけ「情報」と「兵站」に関しては陸・海・空の一体化を進めることが何よりも重要です。
陸戦力を補完するものとして、例えば中国には800万の民兵がおり、150万の武装警察がいます。
これに倣うならば人口比十分の一として、我が日本にも80万人の民兵と15万人の武装警察がいてもおかしくないので、本来はそれらを整備するべきです。
ですが、これもまた様々な議論を巻き起こすことになるでしょう。
いずれにしても防衛力整備とは、装備品の整備ではなく、練度を維持した隊員を含む、生きた「部隊」を整備することにほかなりません。
とにもかくにも、平時における警備と訓練を疎かにしないことが大前提です。
そのことを忘れてしまうと、ウクライナ戦争でのロシア軍と同じになってしまいます。