防衛力整備の議論に財務省は要らない

防衛力整備の議論に財務省は要らない

対GDP比で2%の防衛費を確保することは、我が国の基盤的防衛力を整備強化するため早急に求められている財政措置です。

基盤的防衛力とは、国家間決戦をするための戦力ではなく…

①国内戦の予防・対処

②国境紛争の予防・対処

③グローバルコモンズ(共有財産)防衛分担義務遂行のための防衛力(軍事力)

…のことです。

①②③遂行のための防衛力(基盤的防衛力)を整備するために必要な防衛費(軍事費)の国際的平均値が対GDP比2〜3%ということです。

各国の防衛費の平均値が対GDP比2〜3%となっているにも関わらず、戦後、わが国の防衛費は対GDP比で1%にも充たないという実にお粗末な状態が続いています。

お粗末というだけでなく、このことはグローバルコモンズ防衛分担義務遂行(集団安全保障)のための責務を日本国として果たしていないことになります。

なお、多くの人々が未だに国家間決戦があり得るとし、ゆえに脅威対抗論により防衛力を整備しなければいけないと考えているようですが、本当に国家間決戦をすることになれば、どこの国も現軍事費(防衛費)ではとても足りず、膨大な戦費を追加にてエキスパンド(拡張)しなければならないはずです。

例えば、プーチン大統領もウクライナ侵攻を「戦争」とは言わず、ウクライナ・ネオナチの排除という名目の国内戦か、国境紛争程度に位置づけていたのでしょう。

ところが、世界の多くの国の支援を受けたゼレンスキー大統領の「決戦も辞さず」という姿勢に引きずられ、ロシア軍を増強(エキスパンド)せざるを得ない立場に追い込まれているわけです。

一方、プーチン大統領は「世界が多極化し各国がそれぞれに独立する時代の到来…」と言っていますが、もし本当にそういう時代になったのなら、各地において国家間決戦が頻発し、世界は混沌(カオス)の状態となり、秩序をなくし、破滅するかもしれません。

各国の独立・平和・繁栄を自国が追求するのは当然ですが、世界の秩序が完全に破壊されてしまっては、元も子もなくなることを各国、各国民自身が考えなければならないことだと思います。

対GDP比2%の防衛費は、独力で日本を守るための防衛費ではないことを理解すべきです。

さて、その防衛費についてですが、岸田総理は「防衛力の強化については、必要となる防衛力の内容の検討、そのための予算規模の把握、財源の確保を一体的かつ強力に進めていく」と述べ、今年の9月、それを議論するために「有識者会議」(国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議)を設置しました。

11月9日に第3回目の会議が開催されていますが、そこで提出された財務省の資料をみますと…

「歳出・歳入両面にわたる財源措置については、令和9年度予算までの財政需要だけでなく、その後の歳出水準の継続等を視野に入れて恒久的な財源確保を図る」とあります。

「恒久的な財源確保…」

しかも、不足する財源については「今を生きる世代全体で負担を分かち合っていく必要…」「防衛力強化の受益が広く国民全体に及ぶことを踏まえて、その費用も国民全体で広く負担…」などと言っています。

要するに財務省としては「防衛費を増やすなら、安定財源である消費税の税率を上げさせてくれ…」と言いたいのでしょう。

相変わらず財務省が「税は財源」という誤った考え方を盾にして議論に横槍を入れています。

この際、防衛費整備の議論に財務省を入れることを止めたほうがいい。

かつて第二次世界大戦中の英国首相であったチャーチルは、戦争会議に財務大臣を入れませんでした。

なぜなら、チャーチル曰く「財務大臣を入れても、どうせあいつらはカネがないという話しかしないから…」とのこと。

そもそも変動為替相場制を採用し自国通貨建てで国債を発行できる我が国の安定財源は「国債」をおいて他にない。