川崎市立看護大、志願殺到

川崎市立看護大、志願殺到

きのう内閣府から発表された2021年の第4四半期(10〜12月期)のGDP成長率は、実質の伸び率が年率換算で5.4%となりました。

この時期は、新型コロナウイルスの感染状況が比較的落ち着いていたため、外食や宿泊などのサービス業の需要が伸び、個人消費が持ち直したことがプラス要因の一つと考えられます。

むろん、前期の第3四半期(7〜9月期)がマイナス2.7%だった反動によって大きくプラス化したわけですが、それでも欧米先進国が既にコロナ以前の水準を回復しているのに比べて極めて低い水準に留まっており、回復の勢いは実に鈍い。

GDP成長率への寄与度をみると、我が国の政府消費はマイナス化していおりますので、なによりも政府支出の規模の少なさが経済回復の大きな足かせとなっています。

加えて、オミクロン株の猛威が冷めやらぬなか、コストプッシュ型インフレまでもが襲いかかっていることもあって先行きは不透明です。

未だ岸田内閣はプライマリーバランスの黒字化に固執して歳出を抑えようとしているようですから、今年の第1四半期(1〜3月期)のGDPは再びマイナス化しそうです。

さて、オミクロン株の急拡大を受け、現在は36都道府県に『まん延防止等重点措置』が適用されています。

政府は昨年の秋、感染防止と経済活動の両立を図るためにワクチンの接種証明などを確認して飲食店の利用やイベント参加などの制限を緩める「ワクチン検査パッケージ」の仕組みを導入しましたが、その後、2回の接種を済ませていても感染する人が多いとして、この仕組の適用を原則として停止することになりました。

現状では去年の緊急事態宣言下ほどの厳しい行動制限とはなっていないものの、それでも個人消費を押し下げる効果は依然として大きい。

日本では諸外国に比べて感染で健康を損ねることへの抵抗感が強い一方で、感染した場合の治療体制への不安がことさらに大きいと言われています。

そのうえで、政府が諸外国以上の「緊縮財政(財政収支の縮小均衡)」を行っているわけですから、コロナの脅威が経済活動へ与える影響が欧米先進国よりも強くでてしまうのも当然でしょう。

ゆえに、速やかなワクチン接種を含めた医療提供体制の強化、そして政府の大規模な歳出拡大こそが、コロナ下にあっても景気を向上させるための必須課題です。

その意味で、川崎市民にとっては実に嬉しいニュースが一つ入ってきました。

かねてより川崎市立看護短大の4年制化が望まれ、私も議会での質疑を重ねて参りましたが、市立看護短大と川崎市当局の努力が実ってようやく文科省の認可も降り、今年4月から4年制の看護大学としてスタートすることになりました。

全国には20の政令指定都市がありますが、残念ながらこれまで川崎市は「4年制の看護大学」をもたない唯一の都市でした。

それに、短期大学では学生たちは「修士号」すら取得できません。

しかも、地元に4年制の看護大学をもたないということは、「地元の医療機関で働いてくれる看護師さんを確保することが困難…」であることを意味します。

例えば、いずれの都市でも、看護学生は概ね地元の医療機関で実習を行います。

ゆえに、卒業して就職するのであれば「ぜひ実習を重ねた地元の医療機関で…」となります。

それだけに川崎市が直営する4年制の看護大学は大きな強みです。

まず、ふつうは100万円以上とされる授業料が、川崎市立看護大学では53万円となっており極めて格安です。

さらには特待生制度を新設するほか、市内の医療機関への就職を条件にした給付型奨学金も創設します。

とりわけ実習先は3か所の市立病院(多摩病院、川崎病院、井田病院)のほか市の医療福祉施設が活用され、様々な人生経験をもつ市民が「模擬患者」となって実習に協力するという特殊なカリキュラムも用意されています。

こうしたことを背景に、なんと2次試験(前期)の募集人数70人に対して560人が殺到しています。

つまり志願倍率が8倍に上っているわけです。

北は北海道、南は沖縄まで全国から願書が届いていますので、今後ますます優秀な人材を全国から呼び寄せることが可能となるでしょう。

以上のような理由で、卒業生の多くは市内の医療機関に就職してくれることが期待されます。

そして地元川崎の医療機関で看護師としての力を発揮してくださることは、必ずや川崎市の医療提供能力の向上につながります。

コロナ禍で苦しむなか、このことは間違いなく川崎市民にとっての朗報です。